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【コラム】西部謙司

2025年Jリーグへの期待と懸念

[ 2025年1月24日 14:30 ]

町田のホーム「町田GIONスタジアム」
Photo By スポニチ

 補強編成も大詰め、チームはキャンプに入り新シーズンへの準備を進めている。開幕してみないと全貌は見えてこないけれども、少なくともJ1の戦術的傾向に大きな変化はないのではないかと感じている。

 その中で変化しそうなのが柏レイソル。リカルド・ロドリゲス新監督を迎え、小泉佳穂、原川力、渡井理己、小島亨介とパスをつなぐ気満々の補強を行っている。井原正巳前監督の堅守速攻型から大きく転換するのは確実とみられる。ただ、ここまで明確に攻撃型へ舵を切る補強は他にはない。浦和レッズ、鹿島アントラーズも意欲的な補強ぶりだが、プレースタイルがどうなるのかは想像しにくい。セレッソ大阪はボール保持路線にみえるが、新外国人しだいの気もする。

 どこも補強はしているけれども、およそ前年のスタイルを継続することを前提にしているようだ。昨季優勝を争ったヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島、町田ゼルビアのパワー、スピード、ハードワークのサッカーは以前から積み上げてきたもので、そう簡単に彼らの牙城は崩れないのではないか。

 欧州サッカーもリバプールのプレミアリーグ、CLでの好調やマンチェスター・シティの不振に象徴されるように強度型スタイルが優位になっていて、世界的な傾向なのかもしれない。その意味でJリーグは世界の戦術的な流れに乗り遅れていないのだと思う。欧州リーグでの日本人選手の需要の高まりや、欧州へ移籍した選手たちの活躍ぶりからしても、Jリーグのレベルアップは実感できる。

 ただ、このままでJリーグは大丈夫なのかという懸念も一方ではある。

 2年前、プレシーズンにマンチェスター・シティが来日して横浜F・マリノスと対戦した。当時の夏の暑さ、シティのコンディションがまだ全然整っていないことはあったが、シティと横浜FMの戦術的な差はあまり感じなかった。同種のプレースタイルだっただけに、差が歴然とするのではないかと思ったがそうではなかった。

 歴然とした差を感じたのは、個々の選手のフィジカル面だ。シティが後半に選手を総入れ替えし、つまりシティの体力面でのハンデがなくなると、横浜FMは局面の勝負に勝てなくなっていった。個々の瞬発力、リーチできる範囲、復元能力など、アスリート能力そのものに大きな差を感じた。

 技術、戦術に大きな差はないが、体力の差が大きい。これは僅差にみえるが、実は絶望的な差である。なぜなら、すでにプロになっている選手の身体能力を飛躍的に向上させるのは難しく、体力の差はアスリート能力の高い選手を獲得できるかどうかの財力の差だからだ。

 Jリーグは当面の目標として、EL強豪レベルの戦力と財力を有するクラブをあげていた。ASローマやビジャレアルがあげられていたが、戦力的にはそんなに難しい目標ではない。例えば、川崎フロンターレに今でも三笘薫、旗手怜央、守田英正、田中碧が残っていれば、そのレベルのチームにはなっているだろう。問題は彼らをとどめて置けない財力の差である。

 欧州のアスリート化する戦術と同じ路線をJリーグがとった場合、決め手となる選手獲得競争で不利である以上、その差は広がりこそすれ縮まることはないのではないか。

 Jリーグは欧州とは違う強みと魅力をみせられるリーグにならないと、本当の意味で世界的な地位は向上していかないのではないかという懸念である。(西部謙司=スポーツライター)

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