「舞い上がれ」空飛ぶクルマ 未来に向けた物語

[ 2023年3月21日 08:30 ]

連続テレビ小説「舞いあがれ!」で描かれる空飛ぶクルマの開発(C)NHK
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」で、未来の乗り物「空飛ぶクルマ」の開発が描かれている。21日放送の第118回では、新会社「こんねくと」を経営する舞(福原遥)が、開発を進める刈谷博文(高杉真宙)らに業務提携を持ちかけた。

 制作統括の熊野律時チーフプロデューサーは「空飛ぶクルマを実際に開発している人たちを取材した。これまでの開発の過程や機体のテストのこと、実用化に向けての動きなどについて聞いた。普及するまでにはまだ時間がかかるだろうが、開発は着々と進んでいる。ドラマとして、現実との兼ね合いを考えながら物語を作った」と話す。

 空飛ぶクルマは実際、2025年の大阪・関西万博での商用運航実現に向けて開発が進んでいる。今月14日には、大阪市の大阪城公園で、パイロットが乗って操縦する実証飛行も行われた。

 「舞いあがれ!」で現在描かれている時代は2018年。物語はそれから7年後の2025年以降の未来に向かって進んでいるようだ。

 熊野氏は「このドラマを企画した当初から脚本の桑原亮子さんと、未来まで描きたいという話をした。未来と言っても、2023年の現在から数年後のことなので、取材を基に予測し、実現できそうなことを描いている。JAXA(宇宙航空研究開発機構)さんにもアドバイスしていただいた」と語る。

 舞は当初、航空機のパイロットを志望。航空学校での試練を乗り越え、航空会社の内定を得たものの、リーマン・ショックの影響で入社延期。家業を手伝い、営業として尽力する中で、地元の町工場全体を活性化させるという新たな道を見いだした。

 熊野氏は「空飛ぶクルマの話は最初の構想からあった。『空飛ぶヒロイン』という設定があり、途中でリーマン・ショックが訪れ、最後に物語をどのような展開にするかという話を桑原さんとする中で、舞が空を飛ぶことと物作りを合体させた結末を描きたいという話になった。人と人が自分の力を持ち寄ることで空を飛ぶことさえできる。人間の可能性、明るい希望をもう一度信じられる物語にしたかった。現代のドラマとして、空飛ぶクルマまで行くのは必然だったかもしれない」と明かす。

 物語最終盤のもう一つのポイントが、舞の夫・貴司(赤楚衛二)の動向だ。出版社主催の短歌賞を受賞した後、歌人としての道を順調に歩んでいるように見えたが、21日放送の第118回では、作品作りに行き詰まっている様子が描かれた。

 熊野氏は「貴司の物語も継続して描きたかった。生活が変化する中で、歌人としてスランプに陥り、創作の苦しみを抱えている。彼がどうやってまた歌を詠めるようになるかがポイントになる」と話す。

 このドラマは舞がただ空を飛ぶだけの物語ではない。いかに周りの人たちと手を携えながら舞い上がっていくかが最大のテーマだ。残り8回はその集大成となる。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

続きを表示

2023年3月21日のニュース