盤上の主役は藤井王将の7四角

[ 2023年3月12日 05:13 ]

第72期ALSOK杯王将戦第6局第1日 ( 2023年3月11日    佐賀県上峰町「大幸園」 )

A図
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 【関口武史・第1日のポイント】羽生はカド番で迎えた6局目、先手番で4局目に続き、再び角換わりを投入。ただし、本局は腰掛け銀ではなく早繰り銀を選択し、本シリーズ全て異なる戦型となった。

 藤井が△7四歩~△7三銀と対抗。相早繰り銀という前例の少ない形へ進行し、羽生が▲3五歩と指して25手目で早くも開戦した。温故知新の仕掛けで、羽生が永瀬拓矢王座と昨年11月に対戦した叡王戦の九段戦決勝が本局のベースとなっている。

 当時の対局で羽生は後手番で敗れた。興味深いことに、本局は逆の先手番を持って採用。この戦型に鉱脈を見つけたのだろう。本譜、短時間で突き出された▲7五歩が準備の一手で、重厚な中盤戦の幕が上がった。

 藤井は△7五同歩に72分。これに対して羽生は▲6四角△同歩▲3三歩成△同銀▲7四歩と強攻もあったが、69分の考慮で決戦を見送り、▲6六銀と中央に制空権を求めた。長考合戦を経て角銀交換後に、藤井から放たれた50手目△7四角(A図)が印象深い。弱点である7四の空間を埋めながら、先手陣をにらむ攻防の一手だ。

 角打ちの真の狙いは△4七角成を見せ球に▲3三歩成を強要したことにある。後手の藤井にとって一番の懸案事項は2二の壁銀。この銀の活用を角打ちによって実現させたのが大きい。続けて△4四銀~△7二金と自陣を整え、2歩得を主張すべく局面を収めにいく。

 対して羽生は後手の自陣角の働きを抑えつつ持ち角を主張点としたい。第2日は、藤井の△7四角の価値を巡ってお互いの主張点がぶつかり合う。(スポニチ本紙観戦記者)

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