27度…藤井王将 自ら室温調節 王将戦第6局 盤面も対局室もヒートアップ

[ 2023年3月12日 05:15 ]

第72期ALSOK杯王将戦第6局第1日 ( 2023年3月11日    佐賀県上峰町「大幸園」 )

<第72期王将戦第6局・第1日目>水分補給する藤井王将
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=に羽生善治九段(52)が挑む将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負第6局は11日、佐賀県上峰町「大幸園」で第1日が始まり、先手羽生の角換わり相早繰り銀に進んだ。午後6時、羽生が59手目を封じた。藤井の対戦成績3勝2敗で迎え、初防衛か、タイで第69期以来の第7局突入か。第2日は12日午前9時、同所で指し継がれる。

 (「激しい展開」/) 全力集中モードの藤井に、立会人の深浦康市九段(51)も言葉をのんだ。昼食休憩を終えた対局室。この日上峰町の最高気温は23度、室温は27度あった。暑くないか確認するための入室だったが、「第6局ですから、集中をふさぐことはしたくなかった」と問い掛けを差し控えた。

 冬物の羽織を脱いだ藤井は、自らクーラーへ足を運んで室温調節した。冬季開催の王将戦。対局室に冷房が入るのは第68期第4局、那覇対局以来4年ぶり。外気温の後押しもあり、初防衛への熱い胸中を示すようだった。

 盤面も第1日午前から佳境に入った。戦型は第4局に続く角換わり。18手目、藤井が△7四歩(第1図)と突いて右銀を7三から6四へ活用する相早繰り銀を確定させた。

 早繰り銀には▲6八王~▲7八王が相性のいい羽生王の構え。そこ▲6八王とすると、さらに△7五歩と突き捨てて▲同歩なら△6五角を狙う。4七か8七への角成を確定させ、主導権を引き寄せられる。昼食休憩前には、44手目△7五同歩に1時間12分を投入。「激しい展開になっていますから」。全開した熱量を物語った。

 年度末を迎え、勝率1位賞争いも白熱する。49勝11敗の・817で首位の藤井を、34勝8敗で・810の斎藤明日斗五段(24)が追っている(共に未放映のテレビ対局を除く)。同賞は17年度から4年連続で藤井が獲得したが、昨年度は伊藤匠五段(20)に譲った。今回2年ぶりに返り咲けば、序列1位での達成は00年度の羽生以来22年ぶり。一昨年竜王を奪取して序列1位になって以降、予選免除などにより対戦相手はより強敵ぞろいに。もう日常と化した「勝率8割」は不断の自己革新の証と言えた。

 「こちらだけ角を手放す展開になった。その角がどの程度働くかです」。藤井が語った第2日のポイント、7四角の射程は羽生王に近い。師匠の杉本昌隆八段(54)が藤井将棋を形容した「三次元の読み」はまさに角桂の活用を指す。どんな妙技できょう第2日、初防衛を引き寄せるだろうか。(筒崎 嘉一)

 ≪サイレンにも冷静≫対局中に町内で東日本大震災に関連したサイレンが鳴る場面があった。午後2時30分に事前予告の放送が流れ、地震発生時間の同46分からサイレンが約1分間続いた。対局室でも聞こえたが、前日に主催者側から説明があったため、両対局者とも特に驚くことはなかった。発生時に小学2年だった藤井は「帰宅途中で揺れを感じました」と思い起こし、都内の日本将棋連盟にいたという羽生は「(他の棋士の)対局が中断になってましたね」と回想した。

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