里見女流5冠、元A級・阿久津八段に棋王戦で敗れるも棋士編入試験へ弾み 女性で初進出のタイトル戦本戦

[ 2022年8月15日 21:04 ]

第48期棋王戦挑戦者決定トーナメントの2回戦で阿久津主税八段に敗れた里見香奈女流5冠(日本将棋連盟提供)
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 里見香奈女流5冠(30)が15日、大阪・関西将棋会館で第48期棋王戦挑戦者決定トーナメントの2回戦に臨み、阿久津主税八段(40)に142手で敗れた。タイトル戦の本戦に女性として初出場。名人挑戦権を10人総当たりで争う順位戦A級に2度入った強豪に跳ね返されたが、棋王戦予選から棋士5人を連破した。18日から始まる棋士編入試験へ弾みになった戦いだった。

 4時間の持ち時間を消費し合い、先に残り10分からの秒読みに突入したのは阿久津だった。48手目にして両者馬を作り、終盤の斬り合いに突入するかに思われたが80手目台はお互い陣形整備に費やし、手を戻し合った。寄せへ踏み込むか否か。一局の重みに惑う、両者の胸中を示すような進行だった。

 「よくなった局面もあったと思った。ゆっくり指すつもりだったが実力不足。自分の力は出し切れた」

 振り駒の結果、先手里見で戦型は得意戦法ゴキゲン中飛車になった。角交換から先に馬を作り、自陣に引き付けたが阿久津にも馬を作られ、銀と桂香交換の駒損に。さらに歩切れが響き、里見将棋の代名詞「出雲のイナズマ」の見せ場を作れない。

 それでも容易に土俵を割らない。中盤は元A級棋士からの金星へ接近し、「しっかり丁寧に指されて何度も負けたと思った。女性と指している感じじゃなかった」。初対戦の阿久津の回想が象徴的だった。

 予選から浦野真彦八段(58)、澤田真吾七段(30)、池永天志五段(29)、冨田誠也四段(26)、古森悠太五段(26)を連破。挑戦者決定トーナメントに進出した真夏の疾走はひとまず停止した。

 勝てば3回戦で豊島将之九段(32)と対局した。現在王位戦7番勝負で藤井聡太王位(20)=王将、竜王、叡王、棋聖を含む5冠=に挑み、1勝2敗。31日からは永瀬拓矢王座(29)に挑む王座戦5番勝負が始まる。昨年度竜王、王位、叡王戦で藤井に敗れたとはいえ、今秋ダブルタイトル戦に臨む第一人者に公式戦で初めて挑むチャンスまで肉薄した。

 「持ち時間が長くて、貴重な経験ができた。強い先生ともたくさん指せた。今後に生かせられたらと思う」
 里見は今月3日、清麗を奪取し、半年ぶりに女流5冠へ返り咲いた。女流タイトルの獲得期数を史上最多の49とし、50の大台へ王手をかけた。

 18日からは棋士編入試験に臨む。里見は5月、棋士に混じっての公式戦で直近の成績が10勝4敗に到達。編入試験の受験資格「公式戦で10勝以上かつ勝率6割5分以上」を女性で初めて満たした。今後、月に1度若手棋士と最大5局指し、3勝すれば合格となる。

 奨励会を三段まで昇段したが、年齢制限のため退会。一度は断念した、将棋界のプロを表す四段への道を、再び歩み出すに足る実力を示す棋譜を残した。

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2022年8月15日のニュース