BPO 関テレ「胸いっぱいサミット」での韓国めぐる発言は「放送倫理に違反するもの」

[ 2020年1月24日 14:30 ]

関西テレビ「胸いっぱいサミット」収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見についての記者会見に登壇した(左から)委員の弁護士の中野剛氏、委員長で弁護士の神田安積氏、委員で上智大学法科大学院教授の巻美弥矢紀氏
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 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は24日、兼ねてより審議していた関西テレビのバラエティー番組「胸いっぱいサミット!」での韓国をめぐる発言に関し、記者会見を行い、対象となっていた2回の放送ともに「放送倫理に違反するものだったと判断した」と発表した。

 昨年4月9日と5月18日の2回の同番組で、韓国人の夫を持つ作家・岩井志麻子さんが韓国について「手首切るブスみたいなもん」と発言。事前収録だったが同社は差別的意図はないとして放送。同委員会は「放送倫理に抵触する疑いが大きい」と指摘し、事前収録を放送した局の判断や、謝罪までの対応に変遷があって一定期間を要した点も調査すべきだとしたうえで、昨年7月に審議入りを決めていた。

 同員会では、2回の放送が収録番組であったにもかかわらず、問題の場面が放送されたことを問題視。番組の制作体制や、編集過程、関西テレビの事後対応などの検証を行った。1回目の放送時、考査部専任部次長から「考査的には放送できない言葉である」と問題の発言のカットを促すメールが複数のスタッフに送られていたという経緯もあったが、実際はカットされることがなく、放送されたことも明らかに。また、問題の発言がカットされなかった経緯として「『ギリギリのラインを攻める』ことの意味とその危うさに対して、制作陣の意識が不十分であったと言わざるを得ない」とも指摘した。

 そのうえで、2回の放送での問題の発言は「手首を切る」と「ブス」という2つの言葉をもって例える発言であり、その発言が「外交姿勢の擬人化」にとどまらず、広く韓国籍を有する人々などを侮辱する表現であって、公共性の高いテレビ番組では放送されるべきではなかったと評価されるとした。

 日本民放連盟放送基準には「(5)人種・性別・職業・境遇・心情などによって取り扱いを差別しない」「(10)人種・民族・国民に関することを取り扱う時は、その感情を尊重しないといけなければならない」と規定がある。同基準の解説書には、人種などを表現する時に「なにげない表現が当事者の人種にとっては重大な侮辱あるいは差別として受け取られることが少なくない。当事者の人種を尊重し、かりにも侮辱あついは差別されたという念を抱かせることのないようにしなければならない」と記載されている。

 また、関西テレビは2007年に同社制作の生活情報バラエティー「発掘!あるある大事典2」でねつ造が発覚した際、同年に策定した「倫理・行動憲章」の中で「人間の尊厳に敬意を払い、多様性を尊重します。人種、性別、宗教、国籍、職業などによって差別を行わず、名誉、プライバシーなどの人種を守ります」と宣言している。同「あるある問題」を受けて、放送倫理規範である「番組制作ガイドライン」にも「すべての人は人種、皮膚の色、言語、宗教、などによって差別を受けることは許されることではありません」とも明記している。

 これらをもって、審議の対象とした2回の放送は、いずれも放送倫理に違反するものだったとすると結論付けた。

 委員長で弁護士の神田安積氏は「関西テレビの自主的、自律的な判断を踏まえながら、当委員会としても放送倫理違反になると判断しました」としたうえで「その判断は当初の見解と最終見解の間に局の内部でも見解の相違があった。これはおそらくこの番組について局内にも大きな2つの考え方があったということ。だからこそ、この2つの見解を踏まえて最終的に今回の収録番組での発言を放送倫理に抵触して問題があると見解を出したことは重みがあるのではないかと感じている」とした。 

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