3年ぶり勝利 阪神・大竹のマウンド上での細かなこだわりとは きっかけはヤクルトのある投手

[ 2023年4月9日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1―0ヤクルト ( 2023年4月8日    甲子園 )

<神・ヤ>場面によってプレートの立つ位置を変える大竹(撮影・大森 寛明)
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 【畑野理之の談々畑】おそらく伝わりにくい阪神・大竹耕太郎のこだわりと、すごみを伝えたい。最速は145キロで決して速い方ではない。奪三振も3つ。それでもキャンプ、オープン戦からずっと結果を出し続け、移籍初登板で3年ぶりの勝利を手にした。

 「相手の嫌がることをやろうと。150キロを投げるわけではないので、いろいろと考えてやっています」

 その一つが、ピッチャープレートの立つ位置を変えること。基本的には右打者には真ん中、左打者には右端(三塁側)を踏む。「でも、タイミングが合ってきたなと感じたら、次の打席で変えることもありますし、1打席の中で変えることもあります」。ここまでこだわる投手は珍しい。

 この試合、3回に1度だけ変えた。1死で対戦が2巡目に入り、1番の右打者・浜田を迎えた場面。カウント1―2と追い込むと、スーッと右に寄り、127キロのチェンジアップを低めに落として空振り三振。続く左打者の青木には前の打席で中前打されており、ここでは一転、真ん中に立った。しかし2ボールとなった時に「このまま投げたら3ボールになるイメージがあったので」と右端に戻した。3球目ツーシーム(見逃し)、4球目カットボールボールで一ゴロに打ち取った。捕手の坂本が「同じ球種、同じコースでも立つ位置が変わると違う軌道です」と、横幅61センチの約半分を移動することの効果を説明した。

 大竹は20年から3試合、21年2試合、22年も2試合しか登板していない。何かを変える必要に迫られていた。昨年、ヤクルト・石川雅規が登板する映像を見て、プレートの立つ位置を変えているのを知った。オフに現役ドラフトで阪神移籍が決まった日に偶然、石川と同席する会があった。「思い切って、その理由を聞きました。そしたら“相手の嫌がることをやっているんだ”と話していただいて」。この日は相手ベンチ入り登録されていなかったが、自身を変えるきっかけをくれた敵チームの通算183勝左腕に感謝している。

 「ふりかけです。ご飯を3杯食べるとき、2杯目と3杯目に違う味のふりかけで食べるでしょ。そんな感じなんです」

 スタンドからは双眼鏡でのぞかないとわからないレベル。打者も気づかないまま、同じ感覚で振っていくと術中にはまる。次回のカードで対戦があっても、大竹はまた違う味のふりかけを用意しているはずだ。

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2023年4月9日のニュース