「辛いときはスタンドを見てくれ」 報徳学園の応援団長は、陽気さで名物「アゲホイ」を魔曲に変えた

[ 2023年4月8日 07:30 ]

<報徳・大阪桐蔭>7回のチャンスをアゲアゲホイホイで背中を押す報徳の応援団(撮影・平嶋 理子)
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 甲子園に新たな魔曲が生まれた。第95回選抜高校野球大会で準優勝に輝いた報徳学園(兵庫)が演奏した「アゲアゲホイホイ」だ。以前から有名な応援歌ではあったものの、決勝進出を後押しした大応援団の存在によって改めて注目が集まる形になった。

 2学年97人の大所帯の中で最も陽気な男が、チャンステーマを魔曲に変えた。応援団長の大崎元輝(3年)のことである。大会期間中、同僚には「辛いときはスタンドを見てくれ」と伝えていた。応援の踊りは、伝統の「アゲアゲホイホイ」以外全てを一から考案。ユニークなダンスを取り入れて、観客席から選手を落ち着かせようとした。そしてアゲアゲホイホイでは、一際目立つ赤いメガホンを手に全身を使って踊ると、内外野席の一般客もつられるように一緒に踊るようになった。

 選抜大会に臨む18人の中に自身の名前はなかったのは「悔しかった」。応援団長に立候補したわけではない。「ムードメーカーなので自分しかいない」。誰に言われるでもなく、気付けば応援団の先頭に立っていた。

 試合前には3年生の連絡網に長文のメッセージを入れた。初戦前は「俺ららしく楽しんでいこうぜ」、準決勝・大阪桐蔭戦前には「リベンジマッチや。緊張すると思うけど、冷静にいつも通りやれば勝てるから」。試合後には、主将の堀柊那や副主将の竹内颯平(いずれも3年)らから感謝の返信が届いた。「僕たちの代は、ほんまに仲がいいんですよ」。応援団の結束力は、相手を飲み込むような雰囲気を作り出すことにつながった。

 アゲアゲホイホイの踊りは数種類のパターンを組み合わせて構成されていたものの、準決勝から両腕を上げて踊る一つのパターンに統一された。これも応援団長の発案だった。「OBの方も多く来ていたので、本来の形だけに変えました。これがほんまの“アゲホイ”なので」。ダンスを一つに絞ると、観客も一緒になって踊ってくれた。これは名案だった。

 選抜で勝ち進んでいくうちに、主将の堀は「部員数の多さが僕たちの強み」と口にするようになった。「逆転の報徳」は、大応援団に支えられているという実感があったからだろう。チーム一のムードメーカーの陽気さが選手を鼓舞し、観客すらも巻き込んで、応援歌を魔曲に変えた。(記者コラム・河合 洋介)

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2023年4月8日のニュース