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なぜ白井球審はレアードの英語を理解できたのか 元NPB審判員記者が米国で体験した「罵倒研修」

[ 2022年5月15日 22:13 ]

パ・リーグ   ロッテ5─8オリックス ( 2022年5月15日    京セラD )

<オ・ロ>2回、レアード(左奥)に退場を告げた白井球審(撮影・北條 貴史)
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 ロッテ・レアードが2回の打席で、見逃し三振の判定を不服として白井一行球審に抗議し、退場を宣告させられた。白井球審は試合後、報道陣に対応して「暴言を吐いたので退場。内容は言えません。英語で言われたので、何を言われたのか考えて理解しながら、これは暴言だなと判断した」と説明した。

 なぜ、白井球審は英語による暴言を理解できたのか。それはNPB審判員が米国の審判学校に短期留学しているからだ。NPB審判員は正規に採用されると、約1カ月間、米国にある審判学校で、米国、韓国、ベネズエラなどの若者に混じって「審判員のイロハ」を叩き込まれる。11年から16年までNPB審判員を務めた私も、6年目の16年1月に米国・フロリダにある審判学校に同期の梅木謙一審判員とともに入学した。

 学ぶ内容は大きく分けて2つ。規則書を正しく運用するための「座学」と学んだ知識で実際にジャッジする「実技」。約100人の生徒は、卒業時に若干名採用されるマイナーリーグ審判員を目指して教官にアピールしていく。私と梅木審判員の目的は本場の「審判員養成」のノウハウと判定技術をNPBに持ち帰ることだった。
 NPBの現場でジャッジしている現役審判員として規則を間違えるわけにはいかない。「座学」については2人とも英文の問題でも満点だった。だが、苦戦したのは実技の「罵倒研修」。他の生徒が守備側と攻撃側の選手に分かれる試合で審判員を務めて実技をテストしていく。その中で「ボーク」を宣告するテストがあり、私は確信を持って投手の「ボーク」を宣告すると、監督役を務める教官がベンチから飛び出してきた。

 教官は私の前に立ち、顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げて抗議。日本語に翻訳すると「馬の糞」などの暴言を浴びせてきた。そこで相手が退場すべき言葉を言った時に「退場!」を宣告できれば合格となる。「この判定は納得いかない」など直ちに「退場!」を宣告するべきではない言葉に関しては「ザッツ、イナフ!(そこまでだ)」と言って警告する。

 このようなやりとりを繰り返して「退場させるべきか」の判断を磨いていく。当然、日本人の私達も繰り返し研修を受けてマスターした。白井球審はレアードに警告を与えた上で、暴言に対して「退場!」を宣告。教科書通りの退場劇だった。かつて、審判学校で受けた研修は今も生きている。(柳内 遼平)
 
 ◇白井 一行(しらい・かずゆき)1977年(昭52)10月3日生まれ、兵庫県明石市出身の44歳。小1で野球を始める。明石高では甲子園出場なし。甲賀総合科学専門学校を経て、97年にパ・リーグ審判部に入局。00年のオリックス―ロッテ18回戦(倉敷)で三塁塁審として1軍初出場。これまで球宴には2回、日本シリーズには4回出場している。1メートル77、80キロ。

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