イチロー先生 今夏甲子園敗退直後のラブコールに応え高松商で指導 長尾監督感激「1カ月分の練習した」

[ 2021年12月13日 05:30 ]

高松商業高校の指導に訪れ、バットをチームに渡すイチローさん(右)
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 本当に来た!マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチローさん(48)が12日、高松市のレクザムスタジアムで第1回センバツ王者の古豪・高松商(香川)の野球部を臨時指導した。今夏の甲子園で長尾健司監督(51)が発したひと言がきっかけとなり、前日から2日間の指導が実現。昨年12月の智弁和歌山から臨時指導は4校目となった。

 4カ月前だ。8月24日。高松商の長尾監督は夏の甲子園3回戦で、智弁和歌山に3―5で敗れこう言った。

 「うちにもイチローさん、来てほしいですね」

 この言葉がきっかけだった。

 昨年12月にイチローさんの指導を受けた智弁和歌山が、今夏の甲子園を制覇。対戦した際に感じた「イチローさんの一言が多分、この冬、彼らを強くした。イチロー選手との出会い、世界の選手との出会いが大きかったと思った」という思いが「来てほしい」の言葉につながった。機会があり、発言の意図と真意がイチローさん側へ伝わり、今回の指導が実現した。

 前日から2日間の臨時指導。濃密な時間を終えたイチローさんも、創部112年を誇る古豪との縁を喜んだ。「監督の一言からこんな出会いが実現して。みんなレベルがとっても高い。センスが良い。凄くいい雰囲気で、高松商業。応援したくなっちゃいました。多分、また来るかもしれないですね」と表情を崩した。

 今夏の甲子園で本塁打を放ったプロ注目のスラッガーで主将の浅野翔吾外野手(2年)は、キャッチボールの相手も務めた。「これまで自分たちが正しいと思っていたことが覆されたなと思います」と新たな発見ばかりだった指導に感謝。フリー打撃も見た長尾監督は「世界No・1のバッターですからね。とんでもない。こんなのを見ていいのか?という。1カ月分の練習をした感じです」と感激しきりだった。

 国学院久我山(東京)、千葉明徳に続く高校生への臨時指導は年内はこれで終了したが、来年以降も、高校生の野球への情熱に向き合っていく意向だ。記念撮影を終えたイチローさんは「みんなのこと見てますから。監督(のこと)も見てますよ。期待しています。じゃあね。ありがとう」と笑顔で球場を後にした。

 ≪黒バットをプレゼント≫イチローさんは前回の千葉明徳に続き、この日の打撃練習で使用した黒バットをチームにプレゼントした。長尾監督が「見える所に置いておきます」と語ると「見える所に置いておくと、なくなる可能性もありますから」と笑顔で返答。「気合を入れたい時はこれを握ってもらってもかまわないので。打っちゃダメだよ。握って。僕に見られている感じがするでしょ」とナインにメッセージを送った。

 ▽高松商 1900年(明33)創立、高松市に所在する公立の商業校。野球部は1909年(明42)創部。センバツでは第1回大会優勝、夏は第11回大会優勝など春夏計4度の甲子園優勝を誇る。春夏甲子園、明治神宮大会、国体の4大大会優勝は現在8校あるが、公立校では高松商が唯一の達成。21年夏の甲子園では初戦突破し「4元号勝利」となった。主なOBは宮武三郎(元阪急=現オリックス)、水原茂(元巨人監督など)、牧野茂(元中日)らで、3人はのちに野球殿堂入り。「四国四商」(高松商、松山商、徳島商、高知商)の一つで略称は高商(たかしょう)。全校生徒937人。

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