雄星 天国の「最高の父」に届けたメジャー初勝利 5回10安打4失点の粘投「いい報告ができる…」

[ 2019年4月22日 02:30 ]

ア・リーグ   マリナーズ6―5エンゼルス ( 2019年4月20日    アナハイム )

<エンゼルス・マリナーズ>メジャー初勝利を挙げ、ウイニングボールを手にする菊池
Photo By 共同

 マリナーズ・菊池雄星投手(27)が20日(日本時間21日)、6度目の先発で待望のメジャー初勝利を挙げた。エンゼルス戦に先発し、5回を投げて移籍後ワーストの毎回10安打を浴びたが、4失点と踏ん張って打線の援護を受けた。デビューから1カ月で、ようやくつかんだ1勝目。3月31日に59歳で死去した父・雄治さんに贈る白星となった。

 1点差での薄氷の勝利。菊池はウイニングボールをクラブハウスで受け取り、じっと見つめた。「6試合目にして一番苦しい内容。意識していないつもりでも1勝目は早く欲しい。考えないようにしながらも考えてしまう部分もあった」。もっと早く。本音が出た。

 毎回の10安打を浴びた。自慢のスライダーは抜け気味で、直球に頼った。3回1死ではこの日最速95マイル(約153キロ)の直球を続け、主砲トラウトを3球で見逃し三振。交代がちらついた5回2死三塁、ボアジャスに初球から3ボールの後、直球を3度続けて遊ゴロで切り抜けた。「本当にみんなに支えられ、勝つことができた」と同僚に感謝すると、開幕直後に亡くなった父への思いを口にした。

 「なりたくても(同じようには)なれない。本当に尊敬し、一番僕に影響を与えてくれた人。少しでも父親の背中に追いつきたい」

 幼少時から雄治さんに「人と違うことは当たり前なんだ」と教えられた。己を信じ意思を貫く強さを学んだ。

 その父は1月、体調がすぐれない中でシアトルでの入団会見に同席。「雄星にはいつまでも“ちょっと上手な隣のあんちゃん”が米国で頑張っている。そんな存在で居続けてほしい」。門出に「初心忘れるべからず」の思いを息子へ残した。

 星を眺めることが好きだった雄治さんは4人の子の名前を美南、雄斗、雄星、星花と、星にちなみ名付けた。葬儀が営まれた日本へ帰らず、米国で戦い続けた菊池は「夜空は岩手県も米国もつながっている。父は見てくれている」と気丈に話した。この日も崖っ縁で踏ん張る左腕の頭上で夕闇が落ち、星が輝きだしていた。

 大きな第一歩。「ファンの方々、西武ライオンズにいい報告ができるようにしたい」と活躍して周囲へ恩返しする。開幕前、大先輩のイチローさんからは「今年、当然頑張るわけですけど、3年しっかりやってそのチームのエースになる。雄星にはその力がある」とエールを送られた。全てはこの1勝からだ。

 「米国に来ることを一番喜んでくれたのが父でした。直接お墓にも行けず、まだ会えるんじゃ…という気持ちもどこかにあったりして。最高の父親でしたし、いい報告ができるかなと思う」。亡き父が見守る夜空に、白星をささげ続ける。(笹田幸嗣通信員)

続きを表示

この記事のフォト

2019年4月22日のニュース