【バスケット男子】道具使わない競技で世界と戦う難しさ痛感、器用さだけでは体格差埋められない

[ 2021年8月3日 09:00 ]

<日本・アルゼンチン>3戦全敗に終わりうなだれる八村(右)ら日本代表の選手たち(撮影・小海途 良幹)
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 【メダリストは見た 小林雅英さん】バスケットボール男子1次リーグC組で世界ランク42位の日本は、同4位で19年W杯準優勝のアルゼンチンに77―97で敗れ、3戦全敗で準々決勝進出を逃した。八村塁(23=ウィザーズ)、渡辺雄太(26=ラプターズ)と2人のNBA選手を擁し、過去最強の呼び声も高かったが、45年ぶりの五輪も完敗。04年アテネ五輪の野球で銅メダルを獲得した元ロッテコーチの小林雅英さん(47=エイジェック硬式野球部コーチ)は野球と違い「道具」を使わないスポーツが、世界との差を埋める難しさを感じていた。

 2008年シーズンから大リーグ・インディアンスでプレーしていた時、本拠地のクリーブランドにNBAキャバリアーズもありました。オフに観戦に行ったことがありますが、レブロン・ジェームズがスーパースターとして、台頭してきた時期です。印象に残ったのは第1、2クオーター(Q)はそれほど迫力を感じられないのに3、4Qになると集中力が全然違う。彼らは1試合を通して、全力を出す時間帯を使い分けているように見えました。

 アルゼンチン戦も試合の立ち上がりで、相手は3ポイントシュートを立て続けに決めました。前半は8点差で折り返しましたが、第3Q以降は少しずつ、引き離される展開でした。41歳のルイス・スコラ選手が、あれだけのパフォーマンスをできるのも驚きです。

 一方、日本は故障者もあってNBAプレーヤーである八村選手や渡辺雄選手が、他の選手に比べて出場時間が増え、負担がかかってしまったようです。2人が得点に絡むプレーも普段よりは少なく、イメージした展開とは違ったと推察します。

 印象に残ったのは強豪国との体格、フィジカル、スピード、スキル、テクニックの差。例えば野球は道具を使うスポーツです。そこで工夫を凝らすことで日本人の器用さを生かすことができ、外国人選手との体格の差などをある程度、埋めることはできます。ただ、バスケットボールはボール一つ。世界との差を縮める手段は身一つ。追い付くのは並大抵ではないでしょう。

 その中で、八村選手と渡辺雄選手の存在が光になるのではないかと思っています。私はメジャー契約をし、日本のプロ野球からの移籍でしたが、彼らは米国の大学で結果を残して、はい上がった。これは想像以上に大変なこと。2人が経験したことが、後を追う選手の財産となるでしょう。私が子供の頃、スポーツといえば野球が入り口でしたが、今は選択肢も増えている。彼ら2人はマイケル・ジョーダンがいたNBAの舞台に立っている。裾野が広がり、背中を追いかける選手が増えれば、世界との差は縮まるでしょう。

 私の経験からですが、いつの日か、どんな色でもメダルをつかんでほしいと思います。出場したのは04年アテネ五輪。長嶋茂雄監督のもとプロが集結し、正直、金メダルしか見ていませんでした。予選の韓国との最終戦は2点差の8回2死二塁。9回を投げる予定で2、3球投げ始めた時に谷繁さんがブルペンへ走って来て「行けるか?」って。今だから笑って話せますが、あれほど異常なプレッシャーの中、投げた記憶は他にありません。

 本番では準決勝でオーストラリアに敗れ、3位決定戦(対カナダ)に回りました。この試合も最後を締めたのですが、銅メダルの喜びより「金を逃した」喪失感を抱いたまま、投げていました。ただ、東京五輪が近づくにつれ、メダリストとして学校での講演などにも呼ばれると、みんなメダルに目を輝かせてくれます。プロ野球のタイトルは、野球好きな人しか興味を持ちませんが、メダルは老若男女大好きです。首に掛けてあげるとみんな喜んでくれます。

 だから「銅メダル」は誇りですし、メダルを獲ることができて、本当によかったと思えます。

 現在、栃木県小山市の社会人野球チーム「エイジェック硬式野球部」で、コーチをしています。トレーニングジムでよく、大柄なスポーツマンを見かけますが、比江島慎選手も所属する宇都宮ブレックスの選手だと聞きました。同じ栃木県内に存在するチーム。機会を見つけて今度、観戦に行ってみたいと思います。

 ◇小林 雅英(こばやし・まさひで)1974年(昭49)5月24日生まれ、山梨県出身の47歳。都留高、日体大から東京ガスに進み、98年ドラフト1位(逆指名)でロッテへ入団。04年アテネ五輪のメンバーに選出され、銅メダルを獲得。07年オフにフリーエージェント(FA)権を行使してインディアンスに移籍。その後、巨人、オリックスを経て11年シーズンを最後に現役引退。日本プロ野球通算463試合に出場、36勝34敗228セーブ。米大リーグでは67試合に登板、4勝5敗6セーブ。

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2021年8月3日のニュース