立花泰則氏が語る体操男子種目別鉄棒、メダルへのシナリオ 美しきカッシーナ×磨いた着地=橋本2冠

[ 2021年8月3日 05:30 ]

種目別鉄棒予選で唯一の15点台をマークし、金メダルに最も近い橋本
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 東京五輪体操男子個人総合で史上最年少王者となった橋本大輝(19=順大)が、3日の種目別決勝の鉄棒で16年リオ五輪の内村航平(32=ジョイカル)に続く2冠を目指す。予選、団体決勝、個人総合の鉄棒でいずれも最高点を出しており、2個目の金メダルの可能性は高い。12年ロンドン五輪で男子監督を務めた立花泰則氏(57)が、橋本と北園丈琉(18=徳洲会)のメダルへのシナリオを語った。

 橋本は予選の鉄棒で1人だけ15点台のトップ通過。Dスコアは6・5点でマローン(米国)とドゥーロー(オランダ)と並んで種目別出場8選手の中で一番高く、Eスコアの8・533点も北園とともにトップだ。団体決勝、個人総合でも、安定感のある完成度の高い演技を披露している。これまで準備してきたものをやり切り、着地までまとめれば、金メダルに最も近い。

 橋本が見せる離れ技で一番難しいのはG難度の「カッシーナ」だが、落ち着いていて安定感があるし、会場の器具にもしっかり合わせている。落下を怖がることで鉄棒に近くなることがあるが、橋本は腕をしっかり伸ばして鉄棒をつかんでいる。落下のリスクも背負いながらのギリギリの演技。究極のさばきが、究極の美しさを生んでいる。

 ただ、鉄棒は落下や離れ技で肘が曲がるなど、目に見える失敗が分かりやすい。あとは、やはり最後の着地。種目別決勝では8人全員が止めてくる。着地をまとめないとメダルはない。橋本は5月のNHK杯で着地を安定して止められなかった。だが、五輪直前の合宿中にいろんな人からアドバイスをもらい、終末技の車輪を修正して「伸身ルドルフ」の技術を攻略した。最後の着地が大きく乱れることはないはずだ。

 橋本が一歩リードしている状況だが、他の7人のメダル争いは混戦状態だ。着地や離れ技だけでなく、鉄棒に近い技での実施などが問われ、0・1点の実施減点の積み重ねがメダルの色を分ける。予選通過のためにリスクを負わなかった海外勢も、決勝では攻めてくる。予選では回避していた離れ技の連続を実施して、Dスコアのアップを図る選手もいる。セルビッチ(クロアチア)は17年の世界選手権で優勝しており、ROCのエースのナゴルニーも実力者だ。

 北園も個人総合まで封印してきたD難度の「伸身トカチェフ」と、C難度の「トカチェフ」を入れてDスコアを5・9点から6・2点まで上げてくる。彼の持っているフル構成の演技を見せれば、チャンスは出てくる。橋本と2人で表彰台に乗ることも十分にある。

 橋本は「カッシーナ」と「コールマン」を連続で行い、組み合わせ加点0・2点を加えて勝負をかける可能性もある。東京での種目別決勝の鉄棒は、予選落ちした内村と橋本の一騎打ちだと思っていた。今大会で体操全体のキャプテンとしてチームをまとめていた内村の分もやってやると、橋本も北園も思っている。体操競技の大会の締めとなる鉄棒種目で、2人は必ず結果を出してくれる。

 ◇立花 泰則(たちばな・やすのり)1963年(昭38)10月7日生まれ、岩手県出身の57歳。日体大大学院修了。02年から12年まで徳洲会体操クラブ監督を務める。02年から08年まで日本体操協会ナショナルチームコーチ、その後同チーム監督に就任。04年アテネ五輪体操男子コーチ。12年ロンドン五輪体操男子監督。現在は日本オリンピック委員会で体操競技の専任コーチ(NTC担当)を務める。

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