レスリング・文田 父であり監督・敏郎さんの独特の指導法“グレコローマンフリースタイル”でメダル獲得

[ 2021年8月3日 05:30 ]

東京五輪第11日 レスリング男子グレコローマンスタイル60キロ級決勝   文田健一郎1ー5オルタサンチェス ( 2021年8月2日    幕張メッセ )

17年世界選手権で日本グレコ勢34年ぶりの金メダルを獲得した文田(左)と父・敏郎さん(敏郎さん提供)
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 文田が「ちゃらんぽらんな息子にうまいこと怒ったり褒めたり、父も大変だったと思う」と語る敏郎さんとの二人三脚の日々が、メダルにつながった。

 小学生では「レスリングをやっていないに等しかった」といい、タックルが周囲よりも下手だった。そこで敏郎さんは、がぶり返しや反り投げなど「グレコをフリーに応用した“グレコローマンフリースタイル”」という独特の指導で鍛える。中学の授業が終わると自身が監督を務める韮崎工高まで歩いて来る息子を待ちきれず、車を出した。高校の練習がない週末は、午前8時から昼すぎまで父子2人で汗を流した。

 やると決めた文田の意志は強かった。文句をこぼさず、敏郎さんは「私に言うのが“腹減った”くらい」と振り返る。韮崎工高に進学すると、息子は常に怒られ役。「他の選手の手前もありますから。彼も大変だったと思う」。その代わり、自宅ではレスリングの話は一切しなかった。

 日本の中学ではフリースタイルが中心だが、敏郎さんは「グレコの世界王者を出したい」との思いで両スタイルの指導にこだわった。教え子でロンドン五輪金の米満達弘は卒業を機にフリーを選び「へこんだ」だけに、息子の「グレコをやる」という即答がうれしかった。日本男子がこれまで五輪で獲得した21個の金メダルのうち、グレコはわずか4個。一番、輝くメダルではなかったが、愛息の成長が、本年度で定年退職する父には最高のプレゼントだった。 

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2021年8月3日のニュース