【コラム】西部謙司

ユーロの距離感

[ 2016年6月25日 05:30 ]

決勝トーナメント1回戦イタリア戦にむけて、調整するスペイン代表
Photo By AP

 ユーロ2016が進行中。ドイツ、フランス、スペインといった優勝候補と、それに対する国々の攻防の構図がはっきりしている。圧倒的にボールを支配して攻める側と、深く引いて守備ブロックで待ち受けてカウンターアタックを狙う側。双方の立ち位置がはっきりしている試合がほとんどだ。

 こうした構図は、9月に始まるW杯アジア最終予選の日本の試合でも同じだろう。

 ボールを支配して攻撃する側になる日本にとって、最も参考になるのはこのスタイルのオーソリティーであるスペインかもしれない。

 4-3-3のフォーメーションでプレーするスペインだが、攻撃時には中盤に多くの人数を投入する。両サイドバックが非常に高い位置どりで、ボールより後方に残るのは2人のセンターバックとアンカーのブスケツだけ。中盤のエリアには6人がいる。さらに、ボール周辺に人数をかけるのがスペインの特徴である。

 例えば、左サイドにボールがあるとき、左SBのジョルディ・アルバ、左MFイニエスタ、左FWノリートがいるのは普通だが、さらに右MFセスク、右FWシルバまでボール周辺の左サイドに移動してくる。逆サイドにいる右SBファン・フランを除く5人がボールサイドに集まるのでスペインの数的優位が発生しやすい。

 ここでポイントのなるのが選手同士の距離感である。

 ボールサイドに5人(後方待機のブスケツを含めれば6人)は、数的優位を作れるといっても敵味方が集中しすぎてスペースが狭い。しかし、その狭い距離感でのパスワークで数的優位を生かすのがスペイン流なのだ。フリーになっている選手を上手く使いながらパスを回されると、守備側は人数自体はいてもプレッシャーをかけきれず、足が止まった状態になってしまう。スペインはその瞬間に縦パスを入れてフィニッシュへ結びつける崩しのスイッチをオンにする。

 いわゆる“ティキ・タカ”なのだが、その前提になるのが人数投入と狭い距離感での正確なパスワークだ。同様の戦術を使っているドイツなども、スペインに比べると距離感は少し遠い。スペインの距離感の近さは独特である。

 アジア予選で相手に引かれることが想定される日本にとって、打開のカギになるのは中盤の人数投入と距離感になるだろう。永久にボールを奪えないのではないかと相手に思わせる日本の距離感はどのぐらいか。ちょうどいい距離感を持てるかどうか。それだけで試合が決まるわけではないが、むしろそれがないとボールを支配しても打開できない流れになってしまうので、日本にとっては非常に重要なのだ。(西部謙司=スポーツライター)

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