ききみみ 音楽ハンター

【大下香奈】歌手とフリーアナの“二刀流”

[ 2016年8月22日 05:30 ]

歌手とアナの“二刀流”が武器の大下香奈
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 7月に新曲「グラスの向こうは…赤いジャズ」を発売した歌手・大下香奈(38)は、元地方局アナ。実情はさておき女子憧れの華やかな職業を2つも手に入れた人は、したたかで自己顕示欲が強いんだろうな、と勝手に想像したが、取材すると飾らず謙虚な人柄で、しとやかな歌声に反して男前で歯切れのよい話しぶりに好感が持てた。

 夢は歌手でもアナでもなく、地元・松山大在学中は堅実な公務員を目指していたそうだ。人生を変えたのは、賞金10万円欲しさで98年に出場した「松山春まつり歌謡チャンピオン大賞」。優勝し、作曲家の故三木たかしさんに「君に曲を書きたい」と言わしめた。

 その後、NHK松山放送局アナ募集の新聞記事を見つけた母に「応募したら?」と言われた。公務員試験の勉強が遅れていたこともあり、何となく受けたら合格。97年から契約キャスターになった。7年後に個性を出そうと転職したテレビ愛媛では、情報バラエティー番組などを担当。同局は前述の歌謡大賞を放送していたこともあり、三木さん作曲の「涙にかえてほほえみを」で現役局アナ歌手としてデビューすることを許してくれた。

 11年にフリーアナに転身。レギュラー番組を持つ愛媛と東京を行き来しながら歌手との“二刀流”を続ける。「フリー転向当初は“婚活”も考えたけど…再び歌を勧めてくれる方に出会った。流されるがまま、人との縁だけで来た人生です」と笑う。浮き沈みの激しい世界で力まず、流れに逆らわず、しなやかに泳ぐ人。古巣・NHKの紅白歌合戦での“凱旋唱”も目指す先にあるが、歌と朗読などを融合した独自のステージ表現を探し求め、航海を続ける。(萩原 可奈)

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