斬新なホラー映画「オカムロさん」 松野友喜人監督「いずれレッドカーペットの上を」

[ 2022年10月7日 08:00 ]

映画「オカムロさん」のポスターの前に立つ松野友喜人監督
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 【牧 元一の孤人焦点】斬新なホラー作品が完成した。14日に公開される映画「オカムロさん」。ただ怖いだけではなく、笑ってしまう要素があり、どんでん返しがあり、派手なアクションがある。

 松野友喜人監督(23)は「ジャンルを横断したものにしたかった。脚本を書き進めるうちに、笑える要素も入れていいのではないかと思った」と明かす。

 「『オカムロさん』を検索したら最期」という都市伝説を基にした物語。冒頭から次々と人が殺されるが、その殺され方が極めて残忍で、飛び散る血の量も尋常ではない。

 松野監督は「ホラーには、じわじわと怖さが来るイメージがあると思うが、最初からテンポ感良くお見せしたかった。じらさずにどんどん見せること、首の切断面をしっかり見せること、血の飛び方を多めにすることを意識した」と話す。

 見ていると、最初のうちは目を背けたくなる。ところが、そんな場面があまりに連続するため、やがて見慣れ、しまいには、おかしさすら感じる。通常のホラーにはない展開だ。コロナ禍の街並みのパロディーのようなシーンもあり、笑いを誘う。

 ヒロインを演じた吉田伶香はオーディションで選出。当初は弱々しい女性がやがて強い女性に変わるという振り幅の大きい芝居を見せる。おのを武器に戦うアクションシーンも大きな見どころだ。

 松野監督は「吉田さんはオーディションを受けた約200人の中から満場一致で決まった。あまり演技経験のない人だったが、感情を高ぶらせるシーンで涙を流す演技が素晴らしく、アクションの筋も良かった。難しい演技がたくさんあったので、大変だったと思う」と振り返る。

 監督自身が新人で、この映画が長編デビュー作。日本大学芸術学部映画学科の卒業研究で製作した短編映画「全身犯罪者」が学内で最高の評価を受けながらも結果的に内容の問題から学内上映が禁止になるという過去を持つ。

 松野監督は「『全身犯罪者』はある事件を解決するため刑事がタイムマシンに乗って日本の著名な犯罪者に協力を求める話。その後、『カナザワ映画祭2021 期待の新人監督』で『観客賞』をいただいたことが今回の監督の仕事につながった」と話す。

 小学1年生から中学1年生まで中国・上海、台湾で生活。その頃、米国の「13日の金曜日」シリーズや日本の「男はつらいよ」シリーズなど、数多くの映画のDVDを見たことで、監督業にあこがれるようになったという。

 映画「七人の侍」などで知られる黒澤明監督と誕生日が同じ。「オカムロさん」で大量に血が飛び散るシーンは、黒澤監督の映画「椿三十郎」の最後の決闘場面を思い起こさせる。

 松野監督は「全く意識していなかったが、黒澤作品は見ているので、潜在意識の中にあったかもしれない」と語る。

 黒澤監督は世界的な評価が高く、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞(映画「羅生門」)、カンヌ国際映画賞パルム・ドール(映画「影武者」)などを受賞したが、松野監督も「いずれレッドカーペットの上を歩いてみたい」と国際的活躍を夢見る。

 今作は「侍」など日本的な要素が色濃い上、エンターテインメント性に富んでいることから、海外での上映も一興だろう。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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