里見女流4冠 棋王戦本戦入り&プロ編入試験受験資格獲得 女流棋士初のW快挙達成

[ 2022年5月28日 05:00 ]

棋王戦挑戦者決定トーナメント入りを決めた里見女流4冠(日本将棋連盟提供)
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 将棋の第48期棋王戦予選8組決勝が27日、大阪市の関西将棋会館で行われ、里見香奈女流4冠(30)=女流王座、女流王位、女流王将、倉敷藤花=が古森悠太五段(26)を下して挑戦者決定トーナメント入りを決めた。女性がタイトル戦の本戦(挑戦者決定トーナメント、挑戦者決定リーグ)に進出したのは史上初。加えてこの日の勝利で棋士相手の公式戦が直近10勝4敗となり、規定でプロ編入試験の受験資格を獲得した。こちらも女性では史上初の快挙となった。

 女流タイトル通算獲得数47期を誇る里見が、届きそうで届かなかった偉業を成し遂げた。今期の棋王戦は初戦から4連勝でブロック決勝に進出。関西の若手有望株の古森相手に序盤から一歩も譲らない指し回しで、中盤以降は徐々にペースを握る。最後は相手王を上部につり出して、着実に寄せの形を構築。午前10時の開始から8時間以上経過した午後6時18分、古森を投了に追い込んだ。

 終局後は「いい感じで動きを見せられたが、一手一手が難しく、そこまで自信があるわけではなかった」と明かしつつ「自分でもここまで(予選を)勝てるとは思わなかった。実力以上のものが出た」と女性初の快挙を謙虚に振り返った。

 棋王戦の対戦カードは今後発表されるが、藤井聡太王将(19)=竜王、王位、棋聖、叡王含む5冠=は挑戦者決定トーナメントから登場。藤井対里見のカードが実現する可能性もある。2人は2018年8月の棋聖戦1次予選で対局し、藤井が勝利している。

 もう一つの偉業であるプロ編入試験受験資格獲得。かつて奨励会三段リーグを抜けきれず、年齢制限(26歳)で退会を余儀なくされた里見にとってはビッグチャンス到来だ。「(受験は)あまり考えていなかった。今日も勝てるとは思っていなかった。少し考えたい」と明言を避けたものの、もし挑戦となれば大きな決断になる。

 日本将棋連盟に1カ月以内に受験を申請すれば受理月の2カ月後から新四段を相手に編入試験の5番勝負を行うのが今後の流れ。遅れてきた実力者の動向に注目が集まりそうだ。

 ▽プロ編入試験 26歳までにプロ棋士になれず養成機関・奨励会を退会となり、アマチュアとして将棋大会などで好成績を収めていた瀬川晶司六段が将棋連盟に直談判し、2005年に特例として戦後初めて実施。翌年に制度化され、瀬川を含めこれまで3人が合格している。

 ◇里見 香奈(さとみ・かな)1992年(平4)3月2日生まれ、島根県出雲市出身の30歳。6歳で将棋を始め、2004年に中学1年で女流棋士になる。08年に倉敷藤花戦で初タイトルを獲得。これまでの女流タイトルは47期。終盤の攻めの鋭さから「出雲のイナズマ」の異名を持つ。

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