泣いたらダメなんですか? ソフトバンクナインが来季こそは思い切り流したい“明るい”涙

[ 2022年10月23日 08:00 ]

10月1日、西武・山川にサヨナラ2ランを浴びたソフトバンク・藤井(右)と海野のバッテリーは悔し涙を流す(左は甲斐)
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 先に言っておくが、男の涙は貴重かつ美しい―。ただ「人ん(=の)前で泣くな!ぼけが」とか散々、父親に怒られ続けてきた長男記者は何と言っていいか、思っていいのか分からなかった。ソフトバンクが10月2日のロッテ戦で敗れてリーグ優勝を逃した。

 143マスある、卓上遊戯の「すごろく」であと1マス進めばゴールだったがサイコロの目「1」が出なかった。勝っても分けてもゴール。マジック1でのリーグ最終戦。迫る相手に勝ち負け引き分けの組み合わせの9分の1の確率で、まくられてしまった。

 涙の話に戻る。ゴールまで残り2マスでの10月1日、救援エースに成長した藤井皓哉が延長10回にフォークを西武の山川にすくわれて決勝被弾。捕手・海野とともにベルーナドーム最終戦の場内あいさつの際に泣きじゃくっていた。堂々とした人前での男の悔し涙だった。ただ今宮、柳田主将は泣いていなかった。

 残り1マス、最終戦の2日ロッテ戦。泉が2―0の6回に山口に3ラン被弾。試合後の右腕は、おえつをもらしていた。仲間に抱きかかえられて豪快に泣いていた。周囲の対処は本当に優しかった。

 教育の違いか、時代の違いなのか。リーグ2位でのポストシーズン突入前に藤井皓哉の恩師・おかやま山陽高の堤尚彦監督に連絡をした。「何で人前で泣くんですか? 教育の違いですか?」と聞くと「泣いたらダメなんですか?それぐらい悔しかったんでしょう」。教育者に聞いて、少しだけ納得した。

 ただ1軍初采配の目前で最初にゴールテープを切れなかった藤本監督は“さすが”の答えだった。「目から変な汁が出てきたわ」。ロッテ戦後に1人泣きを告白も、涙を汁物と表現していた。汁が顔をつたったのは野球人生で初だったらしい。最後まで根性、勝ち気、強気、負けず嫌いを徹底して貫いていた。

 ポストシーズンでもリーグ優勝を奪われたオリックスに敗れた。指揮官は最後まで自慢の口ヒゲは見せても、我々の目に絶対に“汁物”を見せることはなかった。10月15日の全日程終了時。9回にサヨナラ打を浴びたモイネロ、甲斐らは泣いていたが柳田、今宮はまた泣いてはいない。歯を食いしばって、むしろ、少し笑っていた。

 泣くは、英語で「cry(クライ)」。小学5年の授業で知ったのか記者の長男は公園での10球連続キャッチボール捕球ノルマが達成できないだけで、泣く。これが何の涙か、分からない。とりあえず「泣くな」とは、父親として言うのだが。

 思うに、男の「暗いcry(クライ)」に、何かの感情を抱くのだろう。来季こそは、ソフトバンクの「明るいcry(クライ)」を思い切り見たい。そう思っていると目にゴミが入って涙した。たぶん、泣いてもいいんだろう。(記者コラム・井上満夫)

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2022年10月23日のニュース