阪神・藤浪は秋のエース! 進撃の裏には“小さな大投手”の言葉「自分も先発のまま辞めていきたい」

[ 2022年8月28日 07:30 ]

セ・リーグ   阪神5―1中日 ( 2022年8月27日    バンテリンD )

<中・神>3回1死一、二塁、ビシエドを二ゴロ併殺に仕留め、ガッツポーズの藤浪(撮影・北條 貴史) 
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 “秋のエース”だ!阪神の藤浪晋太郎投手(28)が27日の中日戦で7回5安打1失点の好投を見せ、今季2勝目をマークした。昨年4月以来となる連勝で、再昇格後のマウンドは4試合連続のクオリティースタート(QS=6回以上、自責3以下)と際立つ安定感。4月から先発陣をフル回転で支えてきた青柳に疲れが見え始めたいま、ポストシーズンも見据えればその存在は頼もしい限りだ。

 今の藤浪は相手の出方を見てスタイルを変えられる。プレイボールから間もなく中日打線の狙いを察知。配球に変化を加えた。

 「フォーク(スプリット)のケアが強かったので、それを梅野さんも感じていたみたいで自分でも真っすぐで押せていた。(各球種の)割合を減らしたり増やしたりと、相手を見てできているというところが良いところ」

 前回20日の巨人戦で多投したスプリットを強く意識する中日打線の狙いを空転させるように、勝負球はストレートを投げ込んだ。奪った6個の三振はすべて150キロ超え。「相当なケアがあったと思いますし、その辺が頭にあるから真っすぐも空振りになりますし、真っすぐがあるからスプリットも空振り取れますし、相乗効果でどっちも安定している」と力強くうなずいた。

 2四球も「勝負にいっての四球」とこれまでの制球難とは意味も質も違う。大崩れすることなく7回を1失点にまとめ、13日のマッチアップでは敗れてしまった小笠原との甲子園V腕対決でもリベンジに成功した。再昇格後は4戦連続のQSを記録。青柳に疲れが見え始め、伊藤将も白星に恵まれない現状。春から奮闘してきた先発陣が苦投する中、藤浪の安定感が際立つ。CSも含め、ポストシーズンでも躍動が期待される“秋のエース”と言える。

 バンテリンドームでの白星は完封勝利した18年9月29日以来。その試合後、梅野から「この感覚を忘れずに来年頑張ろうな」と肩を叩かれた。翌年以降も苦戦は続いてしまったが、再び名古屋の地で頼れる女房役と会心のハイタッチを交わせた。

 “小さな大投手”の言葉が迷いを消した。昨年12月、東京での自主トレ先でヤクルト・石川と顔を合わせた。「藤浪、スライダー教えてよ」。物腰の柔らかいベテランには宝刀・シンカーの握りを教わり、こう助言された。「シンカーも最初は腕は緩んで良いんだよ」。「腕の緩み」は投手にとって御法度。そんな常識を覆された気がした。何より、先発1本で勝負する42歳に「タイプは真逆ですけど自分も先発のまま辞めていきたい」と究極のキャリア像を見た。

 敵地で見せた101球の力投は胸高鳴る18歳の背中も押す。きょう1軍デビューする森木に28歳になった背番号19は「深く考えないほうがいい。周りがバックアップもしてくれるので、自分のやりたいことを思いきりやるのが大事。一生に一回のプロ初登板なので思い切ってやってほしい」とバトンを渡した。

 酸いも甘いも味わった男の言葉には、実感と優しさがにじんだ。 (遠藤 礼)

 【データ】○…藤浪(神)の中日戦勝利は18年9月29日のナゴヤドームで完封して以来4年(1428日)ぶり。今季は8月20日の巨人戦でも16年4月5日以来6年(2328日)ぶりの勝利。セ球団で最も勝利から遠ざかっているのは広島戦で、18年9月22日以来4年ぶりの白星を狙う。

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