殿堂メンバー、ロッド・カルー氏らがコミッショナー批判「今の野球は脳みそを使わせない」

[ 2022年8月28日 12:31 ]

 スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者が、殿堂入りメンバーのロッド・カルー氏(76)らが「今の野球は選手に脳みそを使わせない」などMLBの現状について、ロブ・マンフレッドコミッショナーに厳しく意見したと、26日(日本時間27日)にレポートしている。

 毎年7月クーパーズタウンで行われる殿堂入りのセレモニー。夜は殿堂メンバーたちが集まるプライベートな晩餐会でコミッショナーも参加し、会話を楽しむとともに、新たに選出されたメンバーに贈り物を手渡す。それがここ数年はコミッショナーが殿堂選手に批判される場になっていて、特に今回は普段は物静かなカルー氏が、厳しい言葉を連発した。

 ポイントはアナリティック(データ分析)が幅を利かせすぎていることだ。「(アナリティックが)若い選手に6つ目の道具を使わせない。それは脳みそだ。野球選手は他人にそうすべきと言われたことをやるのではなく、自分で考えてプレーすべき」。「(スローピッチルールの)ソフトボールのような試合になっている。外野手が4人いて、今の選手は打球速度とか、打球角度の話ばかりする。試合の結果を左右するゲームのニュアンスを知らない。そもそも育成から、良い野球選手を作るのではなく、遠くまでボールをかっ飛ばし、速い球を投げるロボットを作っている。我々のスポーツの良い所が消えて行こうとしている。おかげで長々と、テンポが悪くて、退屈な試合になっている」とバッサリ。

 「世界は変わっていくもの。今の野球は私がプレーしていた67年から85年とも、コーチをしていた92年から01年とも違う。しかしながらこの違いが良いことなのか悪いことなのかをはっきりさせないといけない。そして私は良いことだとは思わない。多くの殿堂選手が私に同意している」「コミッショナーは悪いのは自分ではないという態度だが、では誰のせいなのか。コミッショナーが最後の言葉を口にできないのなら、誰が言えるのか。責任を持つべきは彼なのだ」と話した。

 これに対しコミッショナーが、ローゼンタール記者に自分の考えを説明している。「アナリティックはフィールドでプレーされているゲームに悪影響をもたらしている」。「しかしながら無くならない。球団はこれで勝ち数を増やせると信じているし、勝ち星を増やすのが彼らの仕事だからだ」。

 とはいえ、MLBもアナリティックの行き過ぎに対処し、ゲームを良くする努力はしている。そして委員会が23年シーズンに向けルール改正に動いている。まずはピッチクロック。「ピッチクロックは試合のペースを改善するだけではない。(休まず次々に投げないといけないから)全球を目一杯投げられない。それでゲームのプレーの仕方が変わる」とコミッショナー。そして守備シフトの制限。「右翼手の前に第4の外野手が立っていなければ、左打者のアプローチも変わる。頭を越して本塁打を狙わなくていい。ヒットでいい。ここでもゲームの仕方が変わる」。アナリティックを禁止することはできないが、ルールを工夫することで、選手が脳みそを使い、ニュアンスを考えるゲームに戻す。来年の晩餐会では、殿堂メンバーたちの怒りは多少は収まっているのだろうか。

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2022年8月28日のニュース