【スポニチスカウト部(18)】東北・伊藤 花巻東・麟太郎K斬り みちのくの大型二刀流

[ 2022年6月21日 06:00 ]

春季東北大会で準優勝した東北のエース伊藤(撮影・村上大輔)
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 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第18回は東北(宮城)の二刀流右腕・伊藤千浩(かずひろ)投手(17)。1メートル87の長身で攻守にダイナミックなプレーを見せる新怪物候補の現在地に迫る。

 無名に等しかった伊藤が、ドラフト候補に急浮上した。9日に行われた東北大会準々決勝で、今春選抜出場の花巻東(岩手)と激突。1点リードの6回途中に左翼手からマウンドに上がった。最後まで一人の走者も許さない快投。高校通算69本塁打を誇る佐々木麟太郎内野手(2年)にも力勝負を挑み、1メートル87の長身から投げ下ろす直球で空振り三振に斬った。

 「気持ちの入った真っすぐがよかった。夏への自信につながると思います」

 4番とエースを担う大型二刀流が、投打にわたる活躍で春の東北大会準優勝に導いた。投げては初戦の光南(福島)から準決勝の青森山田戦まで、13回連続無失点。打っては光南戦で2ラン、花巻東戦、決勝の聖光学院(福島)戦で適時打を放つなど大暴れした。

 転機は昨秋、2回戦で山形中央に2―7で敗れた東北大会。勝利を渇望した伊藤は、中学時代まで本職だった投手への再転向を富沢清徳監督に直訴した。入学時は最速135キロだった直球は、外野手として積んだトレーニングの成果もあり142キロまで伸びた。変化球はカーブとチェンジアップの2種類しかないが、憧れを抱く同校OBのダルビッシュ(パドレス)の投球動画を参考に切れ味を磨いている。

 東北大会決勝の聖光学院戦では救援登板し2回1/3を4失点でKO。チームも3―4で敗れて優勝を逃した。真っ向勝負を挑んで経験不足を露呈したが、その魅力に変化はない。視察したロッテの榎康弘スカウト部長は「真っすぐに角度と力がある。スケールの大きさが魅力」とダイヤの原石を評価した。

 本格的に投手を始めて約7カ月。最後の夏に向けて伊藤は「甲子園で戦えるように頑張っていきたい」とさらなる成長を誓った。(柳内 遼平)

 《兄・康人も二刀流、BC群馬でプレー》伊藤の3学年上の兄・康人さん(20)も、同校で主に中堅手として活躍した。現在は独立リーグ・ルートインBCリーグの群馬でプレー。1メートル70、75キロの外野手ながら、昨季は投手としてもリーグ戦に出場した。東北大会中も兄と連絡を取り、励ましの言葉を受けていた伊藤。「ずっと憧れていた存在。最近は褒められることがあるので自分の成長を実感できています」と笑う。兄弟の姿を見守ってきた母・美和子さんは「プロ野球選手になることが小さい頃からの2人の夢。若いうちは大きな目標を追っていいと思います」と笑顔で語った。

 ☆球歴 菅谷台小2年時に利府西スポーツ少年団で野球を始める。利府西中では軟式野球部に所属。東北では1年秋からベンチ入りし、3年春から背番号1。

 ☆球種 直球、カーブ、チェンジアップ。

 ☆東北OB 元ヤクルト・雄平、元広島、西武・嶋、元横浜、マリナーズ・佐々木主浩、元阪神・葛西ら。

 ☆リリーフ適性 わずかな球数で肩をつくることができ、左翼手からマウンドに上がるケースでも、先頭打者から140キロ台を投じる。

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