【内田雅也の追球】なぜ、悲しいのか。思い思われという一丸にこそ明日はある

[ 2022年4月22日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5ー7DeNA ( 2022年4月21日    横浜 )

<D・神> 3回1死一塁、佐藤輝は中飛に倒れる (撮影・平嶋 理子)
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 悲しい敗戦だった。冷たい雨のなか、辛抱強く応援していた阪神ファンの心がむなしい。嘆きを映すように雨は激しく降った。涙雨である。

 6回裏、降雨中断。ファンが祈るように再開を待つ間、テレビ中継画面には笑顔で戯れる選手の姿が映った。おもしろうて、やがて悲しき――そんな光景だった。

 雨中の一戦。試合成立の5回裏が正念場だった。だから勝ち継投の投手を早めに投入すべきというのは結果論だろう。

 1点リードで2死二、三塁。「あと1人」までこぎつけていた。雨は激しさを増していた。暴投で同点を許し、3連打で2点のリードを許した。

 雨でボールは滑り、足場は緩んだ。馬場皐輔は制球がきかなかったろう。ブロッキング技術が高い梅野隆太郎でもそらしたのは、本塁付近の土が乱れていたからだろう。天候や状態の不運を嘆くのがまた悲しい。

 この回DeNAの各打者が見せたセンター中心の打撃に今の阪神が失っている姿勢を感じる。5安打はすべて単打。1死一、二塁での戸柱恭孝は続けて空振りしていたフォークを3度目に食らいつき、ボテボテ投ゴロとなった。結果進塁打となり、後の逆転を呼んだ。

 使い古された言葉だが打“線”である。1人ではなく全員で攻める。次につなぐ姿勢が大切である。昨年まで阪神こそが示していた姿勢をなくしているのが悲しい。

 野球は団体競技だ。同僚を思いながら、一丸となって戦いたい。

 たとえば、投手・斎藤友貴哉が自ら二塁打を放ち、犠飛で生還し先制した3回表。その後の打撃姿勢が悲しかった。

 斎藤が本塁を駆け抜けた直後、佐藤輝明、大山悠輔がいずれも初球を打って凡退したのが悲しい。斎藤はベンチで休む間もなくマウンドに上り、制球を乱した。変化球が続けて抜け、牧秀悟には逆転3ランを浴びた。

 投手が走った直後は時間をかけろ、と少年野球でも指導する。3、4番に「待て」はない。ゆっくり打席に向かう、待球する、打席を外す…など投手を思いやりたい。持ち味の積極性は保ちたいが、思い思われという一丸にこそ明日はある。

 セ・リーグすべての借金を背負い、世界(セ界)の悲しみが集まっている。悲しい理由はちゃんとある。敬称略=(編集委員)

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2022年4月22日のニュース