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【内田雅也の追球】「オレを使え」の気概 惨敗阪神に見えたギラギラした光

[ 2021年8月22日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2ー6中日 ( 2021年8月21日    バンテリンD )

<中・神(13)> 7回1死、代打・木浪は左前打を放つ(撮影・大森 寛明)
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 大リーグの野球場でよく流れる『センターフィールド』は1985年、全米ビルボード1位を獲得した名曲だ。近年、札幌や仙台、所沢で聞いたことがある。

 米ロックバンド、クリーデンス・クリアウオーター・リバイバル(CCR)を率いたジョン・フォガティが、バット型のギターを弾きながら歌っている。

 「オレを使ってくれよ、監督。準備はできてるぜ」と歌う。原詞は「コーチ」だが、日本なら「監督」の方がしっくりくる。選手が出番をアピールする歌詞だ。「今日はやってやるさ。オレを見てくれ。オレはやれる。センターでいけるぜ」

 アップテンポの曲で、明るく、おおらかに歌っている。やはり、野球選手はこうありたい。

 前夜同様、守備面のミスが相次いで敗れた阪神だが、「オレを使ってくれ」と言わんばかりに、アピールする選手の奮闘が印象的だった。

 五輪中断期間明けから6番・左翼で起用されているメル・ロハス・ジュニアは来日初の3安打猛打賞だった。左打席で右投手の外角球を反対方向へ連続二塁打、右打席で左投手の内角球を引っ張って単打した。懸命に力走する姿もいい。

 五輪中断期間に一時帰国していたジェフリー・マルテは目下、2軍で実戦出場して調整中。2軍遠征先の九州・筑後にいるマルテも「オレを使ってくれ」と、うずうずしていることだろう。外国人枠の関係があり、使う側にはうれしい悩みとなっている。

 同じ気概は島田海吏や木浪聖也にも見えた。

 島田は4回表2死三塁、代打で起用され、適時打を放った。2球で追い込まれたがファウルと選球で粘り、内角スライダーに詰まっても右前に落とした。1点差に迫り、直後の二盗で同点機をつくった。この日最も相手に迫った瞬間だった。

 木浪は7回表1死、代打で左前打した。前夜に続く途中出場での安打だ。二塁に入ったその裏、内野安打になったが、二塁ベース寄りのゴロ処理は軽快だった。

 監督・矢野燿大が「チームのために、はレギュラーの言葉」と話していたのを覚えている。控え選手は「試合に出よう」と半ば自分勝手で構わないとしていた。

 現役引退後、本紙評論家時代の2012年に出した著書『捕手目線のリーダー論』(講談社)には<若い選手が「優勝に少しでも貢献したい」と言っているのを聞くと、疑問を感じる>と書いている。

 <レギュラー争いをしているような若手や、そこに達していないような二軍選手ならば、「自分が試合に出るためならば、なんでもやります」「周りの選手をすべて蹴落としてでも、レギュラーをつかみ取ります」そういうコメントを残すぐらいに、ギラギラしていてほしい>。

 そんな競争心こそがチームの原動力となるというわけである。

 冒頭の歌の題名『センターフィールド』はむろん、守備位置の中堅手だが、加えて「中心」という意味も含まれているそうだ。自分が中心――という気概が集まれば、そのチームは強い。

 3連敗と苦しい状況のなか、矢野の言うギラギラした光が見えたのを救いとみている。 =敬称略= (編集委員)

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