次はプロで対決を…明桜の二刀流・山口、ライバル吉田との“約束”

[ 2018年10月10日 10:10 ]

7月24日、決勝の試合後に健闘を称え合う金足農・吉田と明桜・山口
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 25日に迫るドラフト会議。金足農の吉田輝星投手(3年)がプロ入りを決意し、10日に会見に臨む。そして、秋田にはもう一人忘れてはいけない選手がいる。明桜の二刀流・山口航輝(3年)だ。昨夏は秋田大会決勝で金足農を破り甲子園に出場。当時の吉田に「投打で歯が立たなかった」と言わしめた。

 1年前、山口はエース兼4番として秋田大会を戦った。投げては最速146キロの直球を武器に4戦25回2/3を投げ2失点、30奪三振。打っては1本塁打を含む16打数9安打で打率・563と、2年生ながら圧倒的な力を誇った。

 ところが金足農戦で不運に襲われた。4―0でリードしていた5回、一塁に出塁した際に、吉田からのけん制球にうまく帰塁することができず利き腕の右肩を痛めた。試合には勝利したが、無念の途中交代となった。整列の後で悔し涙を見せる吉田に「まだ終わりじゃないから、また来年勝負しよう」と再戦を約束した山口。このときのケガで甲子園では登板できず、本格的に投球練習ができるようになったのは今年の春だった。

 甲子園の土を踏むこと。吉田との再戦。二つを胸にリハビリに励んだ。一方の吉田も「悔しい思いがあったから、冬の練習に耐えられた。山口との勝負のために冬もイメージしてきた」と、ときに5時間のランニングをこなすなど凄まじい練習量で雪辱に燃えた。

 2人が準備万端で臨んだ今夏。だが、ここでも山口に再び不運が待っていた。「4番・左翼」で出場した準決勝の能代松陽戦。4回の打席で右足首に死球を受け、痛みのため予定していた救援登板を回避せざるを得なかった。チームは勝ち、翌日の決勝へ。金足農との勝負だったが「歩くので精いっぱい」と登板はかなわず、吉田との投げ合いは実現しなかった。

 それでも、山口は何とか打席には立った。4打数無安打3三振。吉田に封じ込まれた。「正直、それまであいつの球を速いと思ったことは一度も無かった。でも、初めてあいつは“えげつない”と思った」。試合後は昨年と逆に、吉田から山口へ声をかけた。「ここまで成長できたのは山口のおかげ。ありがとう」。山口は「甲子園で暴れてこい」と返し、高校での二人の戦いは終わった。

 甲子園を熱狂の渦に包み込んだ「金足農旋風」は、山口の存在があったからこそだ。山口は一足早く9月26日に、プロ志望届提出者として日本高野連の公式サイトに掲載された。2人がプロで戦う日が待ち遠しい。(記者コラム・武田 勇美)

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