【全日本野球協会・山中新会長に聞く】野球離れを防ぐために…子どもから大人まで一貫した指導を

[ 2018年8月29日 12:00 ]

山中正竹氏
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 【伊藤幸男 一期一会】スポーツに興じる子どもが少なくなっている。特に野球人口の減少は顕著だ。プロ・アマ球界も危機感を共有し、様々な打開策を講じているが、いまだ効果は見えていない。今年5月、全日本野球協会(BFJ)会長に就任した山中正竹氏(71)は、指導者の力こそ大きな影響力があると考えている。同氏に(1)指導者論(2)スポーツの意味(3)大学野球部監督に求められる役割―をテーマに聞いてみた。

 ――甲子園記念大会が大盛況のうち閉幕しました。とはいえ各予選は部員数不足により連合チームでの出場など、確実に若年層の野球離れは進んでいます。

 「とりわけ小中学生世代が顕著です。2、3年後には高校野球にも影響が出てくる。その理由は(1)場所(2)金銭負担(3)送迎など親の負担。その他に間違った指導法、依然として旧体質の厳しさを叩き込む指導者の存在が出てきた。子どもにとっては好きな野球をやりたくても、やりたくなくなる環境。有能な人材も野球から離れていくんです」

 ――指導者ライセンス制があるサッカーとは違い、野球は幼少時から様々な団体があります。

 「サッカー界は世界に伍していくため指導者のシステムを構築した。対して野球はどうでしょう。子どもの頃から野球をやるのが当たり前の時代が続き、衰退などありえないと信じていた。だから少年野球の指導者はリタイア世代に委ねる傾向にありました」

 ――それではどうすべきですか?

 「子どもから大人までの指導の一貫性です。我々BFJでも研修制度、資格制度を設けていますが、まだ十分とはいえない。たとえば小学校期には野球の面白さに興味を抱かせ、高学年から中学生期はルールやマナーの勉強、次に専門的な技術を学ばせる。もちろん個々の体力や経験、技術力に応じた指導法が前提です。最終的に(1)プロ野球など専門的レベル(2)指導者(3)地域スポーツの振興―と目指すべき自分を選択させる。従って高度な知識、国際的レベルを理解した指導も必要です。そういうことを理解した指導者の力で野球人口減少を阻止し、野球復活へのムーブメントをつくってもらいたい」

 ――とはいえ野球で知名度を上げるため「勝利至上主義」は依然として存在します。

 「確かに…。きれい事を並べても勝てないだろうとの声は存在します。しかし、その考えこそが現実を招いた要因の一つと認識すべきです。単に勝利を求めるだけではなく、高いパフォーマンスを身につけるため考え、工夫し、継続する。その上でチームとして目標達成への喜びを共感する。野球を通じて将来、社会の様々な荒波に直面しても乗り越えていく人間に成長しなければ意味がない、と私は思います」

 31日は野球を含めたスポーツの魅力、意義について。

 ◆山中 正竹(やまなか・まさたけ)1947年(昭22)4月24日、大分県出身の71歳。佐伯鶴城から法大に進み、東京六大学史上最多の48勝。住友金属監督として82年都市対抗優勝。92年バルセロナ五輪では監督として銅メダルを獲得した。94年から法大監督として7度東京六大学リーグ優勝。03年からプロ野球横浜の専務取締役。16年野球殿堂入り。今年5月、全日本野球協会(BFJ)新会長に就任。

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