“船長の夢”への第一歩 少女が上げた40キロキハダ 世界記録を樹立してほしい

[ 2021年9月19日 07:08 ]

カンナが釣ったキハダは40キロ
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 【釣遊録】今年も静岡県・相良漁港の大洋丸船長、松下正春さんのお誘いでカジキに衛星タグ(コンピューターを仕込んだ追跡システムの標識)を打つという海洋調査をしています。東京大学大気海洋研究所の佐藤克文教授の指導の下で行っているのですが、カジキは簡単には釣れません。方法はトローリング(引き釣り)なので静岡県の許可を得て、合法的に行っています。

 松下さんは地元の有志、サーフィン仲間や釣り仲間もクルーとして船に乗せて海洋調査の体験をさせています。今年もさまざまなゲストが参加していますが、その中に木下栞那さん(以後カンナ)がいました。松下さんのサーフィン仲間の娘で、クルーとしては最年少15歳(高校1年生)。幼少の頃から家族で堤防釣りを経験した程度ですが、サーフィンでは地元でその名を知られる有名な達人です。

 そんな彼女と父親同行で一緒に大洋丸に乗り、御前崎沖へ出ました。トローリングで魚を釣るという行為そのものは決して難しいものではありません。最も重要なのはアングラーの技術ではなく、船と釣り具装備、船長やクルーの技術と経験です。

 松下さんはカンナに対してある希望を持っています。彼女がやる気になったら日本記録や世界記録を狙いたいと。堤防釣りではそういうチャンスはめったにありませんが、沖へ出ていればさまざまな記録サイズの魚に出合えます。それをカンナ自身が技術を磨き、ヒットしたらIGFA(国際ゲームフィッシュ協会)ルールにあるように、手伝ってもらうことなくファイトすれば記録樹立となるのです。

 船尾から流したルアーは4つ。松下さんが厳選したものです。

 走っていると鳥山を見つけました。ここを横切るように船を走らせてもヒットしませんでした。一度Uターンして「小さいルアーに替えようか」と談議していたところ、リールがけたたましい音を立てラインが出ていきました。

 「カンナやるか?」と松下さんが促しましたが、あまりにも魚が大きいのビビってしまったのか首を横に振ります。他の誰もやらないので私がまずファイトしました。しかし、すぐに「カンナにファイトの練習をさせよう」と思って交代。もし記録狙いならこれは無効ですが、彼女にはいい体験練習です。

 「ジャイアントツナ対JK(女子高生)だ」。少女のファイトはクルーみんなを和ませてくれます。もちろんここからは誰も道具に触りません。

 カンナは歓喜の悲鳴を上げながらリールを巻き、最初はニコニコしていましたが、10分を越える頃から顔が引きつってきました。「どのぐらいの大きさの魚がついているのかも分からず、リールが巻けない。巻いてもまた糸が出ていく。ポンピングは腕を使わず足を屈伸させ、肩でリールを巻けと教えられても、体力がどんどん削られていく。サーフィンで鍛えた腕も魚には負けそうだった」。リーダーが見えてくる頃には疲れ切っていました。しかし、やっと魚に合えるとワクワクしていたそうです。

 松下さんがリーダーを取り、私がギャフを掛け、船に引き上げた魚を帰港後に検量したらなんと40キロありました。

 自分の船に乗って大物を狙いたいという女子はめい以降いないそうです。「カンナは最後の希望だ」とカジキ調査をしつつ、ゲストに大物を釣らせるという松下さんのポリシーにとってカンナは救世主になるかもしれません。(東京海洋大学客員教授)

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