G1周年記念競走展望

【からつG1 全日本王者決定戦】上野 オラの町唐津で豪快差し

[ 2016年12月9日 05:30 ]

 ボートレースからつ開設63周年記念のG1「全日本王者決定戦」は10日から15日までの6日間シリーズ。年末の住之江グランプリに出場する12人を地元戦士6人が迎え撃つ。上野真之介(28=佐賀)は、地元水面でG1初制覇に闘志を燃やす。また、唐津は福岡市内から車で約1時間弱と旅打ちにもってこい。イカの活き作りなど、新鮮な海の幸が舌を満足させてくれること間違いなし。

 見慣れた秋祭りのフィナーレの日に“からつの真之介”は節間の最高配当を引き込んだ。11月4日、G1若松周年2日目1R。上野は6枠、大外からコンマ10のトップSから最内差しで浮上。2Mでクルリと艇を返すとターンもれしたイン池永太をつかまえて1Mを先取りし初白星を挙げた。上野の意表を突いた急浮上は9万1190円(100番人気)の6日間の最高額となり、城下町育ちの上野が波乱の宴(うたげ)の主役を演じた。

 「うちの町内は、お城の近くではないので、くんちには出ていませんが、我が家は、レース場のほぼ真裏にあります。エンジン音は、かなり聞こえてきますし、どのレーサーよりも、というより世界一、からつボートに近いと思います」

 毎年11月2~4日に地元の神社で行われる祭事「唐津くんちの曳山(ひきやま)行事」が12月1日に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録されたばかり。唐津市生まれ、唐津市育ち、唐津工卒の上野は地元周年を前に“世界のくんち”となった地にある水面の“世界最至近男”をまずはアピールした。

 08年5月に初出走、10年6月にプロ初Vを飾ったのがホームプール。ただ最近では「好きじゃないと思うときもあります」と言う。優勝は10年7月一般戦まで遠ざかっており、14年周年で地元で初のG1戦に挑むも予選敗退。15年の九州地区選では即日帰郷だった。今年は3節走って準優勝1回で10月の準優勝戦敗退に終わったG2・MB大賞以来の当地参戦だ。「竜太(峰)さん、コージ(同期・山田康二)の“濡れ男(通称・ヌレダン)”2人がいないのでそういうときぐらいは頑張りたいですよ。いつもバーターで出ていたんで」と謙そんするが的確イン戦と特にダッシュ枠からの爆裂配当を提供する捲り差しは上野の魅力。豪華遠征陣の好きにはさせない。

 16年は津、びわこで優勝。11月末の時点で30節を走って11優出とまずまずの走りだった。「A2級に落ちたときもあったけど、伸びにこだわって結果にもつながったと思い込んでますし、夏は苦手で冬が好きですね」。年末を前に状態はまずまずといったところだ。

 メンタル面にも修正を加えた。「ミスしても気にしない。悪いことを考えると弱気になる。いいことを考え、へこまない。本などを読んでから心の持ち方を変えたんです」。ポジティブ思考も“絶賛磨き中”だ。

 峰竜太はSG常連だが上野はまだ最高峰競走の出走経験はない。「遠くに行きすぎて背中が見えないので、せめて背中くらいは見たい。SGカッパも欲しい」と意気込む。“師走”と書いて12月。故郷の唐津で、不在な師匠のためにも“真の快走”を狙ってくる。


◎赤岩 第2の故郷九州で気合

 第二の故郷、九州で“魂”を込めてくる男がいる。赤岩善生(40=愛知)だ。からつには準優敗退となった10月のG2・MB大賞以来の参戦。参戦はほぼ年1回のペースだが、毎節楽しみにしているという。

 「九州の場は地元だと思っているからね。ニヤニヤするタイプではないけど、九州SGやオールスターに選ばれたときなんかは、水上で評価してくれてたんだなと思っている。燃えることは多いし、やっぱり九州が好きだからさ、けっこう気合が入るんだよね」
 ピットでは、赤色のプーマのジャージーを脱げば首に「薩摩魂」と書かれたアンダーウエアを着ていることが多い。水面脇のバックスタンドには毎節「薩摩隼人の血がさわぐ!!」と書かれた“燃えよレッドロック”と鼓舞する横断幕が掲げられている。赤岩の育ちは愛知県だが、鹿児島に父親の実家があり、今も本籍を置く。「年4回くらいは(鹿児島に)帰ってる」と愛着は強く“薩摩愛”だけでなく“九州にある薩摩”だと思って走っているのだ。

 「まず、自分の調整をしてから」と前検日は多くを語らず、忙しく陸上を動く。どんな凡機、エース機、好素性機でも、まずは本体に着手する。“魂の整備”を前検作業終了間際まで続けて初日に挑み、納得しなければ、ひたすら本体。機体の手応えをつかんでから、緻密なペラ調整に移行するスタイルで水陸で機・体・技で絶対に最後まであきらめることのない、パワフルなソウルを奏でてくる。

 12年の当地MB大賞では優出5着で周年は14年以来久々の参戦だ。SG1冠、G15冠を持つが九州の場でのVは、お預けとなっているだけに、16年末の“からつ魂”全開から、来年の九州奪取(ダッシュ)への序章となるとみている。

◎先行予想

 初日、2日目に恒例のWドリーム戦が組まれている。出場選手の中でからつ周年を制しているのが52回大会の山崎智也、56回深川真二、57回中島孝平、60回田村隆信、そして一昨年の61回大会の瓜生正義。次節に住之江グランプリを控え、GP出場組はスリットではあまり無理できない。伏兵にもチャンスは十分ある、波乱含みの周年ともいえる。とはいえ、グランプリ組もリズムを崩したくないのも人情。攻守の難しい6日間となるだろう。

 瓜生は今年の序盤は勝負どころで精彩を欠いてきたが、6月桐生周年Vをきっかけに徐々にリズムアップ。同蒲郡グラチャン準V。そして10月福岡ダービーで3年ぶりのSGタイトル制覇。一時は獲得賞金トップにも立った(大村CC終了3位)。さあ、2年ぶりのグランプリに向け、その前にひと仕事だ。

 からつは山崎にとって忘れられない地だ。デビュー5年目のからつダービーでSG初戴冠。全国に名を広めトップスターへと駆け上がって行ったのだ。今年も4月桐生DC、6月蒲郡グラチャンを制し順風満帆だったが、8月の地元MB記念予選敗退から変調。低迷を余儀なくされた。だが、今は最悪を脱している。恩恵ある地で完全復活をアピールだ。 コース不問の立ち回りは池田浩二。勝負どころで一気にのみ込む力を持っているのは鳴門の渦潮・田村だ。篠崎兄弟も話題を提供だろう。それら強豪を迎え撃つ“がばい軍団″は6人。強気の攻めで7年ぶりの周年奪還に燃えるのが深川だ。今年、常滑ヤングダービーを制しG1初戴冠の松田大志郎にも熱視線。

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