G1周年記念競走展望

【尼崎センプルカップ】絶対王者松井、水面相性ピッタリ

[ 2014年6月13日 05:30 ]

初日ドリーム戦1号艇にスタンバイしてシリーズを優位に進める構えの松井繁
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 昨年6月の前回大会から装いも新たに名称が変わったボートレース尼崎の開設記念競走「尼崎センプルカップ」が、今年は62周年記念として14日から19日の6日間で開催される。主役は松井繁(大阪)だ。3月当地SG総理大臣杯(ボートレースクラシック)の覇者で水面との相性がピッタリなのは言うまでもない。初日ドリーム戦1号艇にもスタンバイしてシリーズを優位に進めるはずだ。地元兵庫センプル軍団の勇躍にも期待はかかる。13年1月の前々回大会で14年ぶりに男女混合G1戦を制した平山智加(香川)に続けとばかりに、近況成長著しい魚谷香織(福岡)にも注目したい。

 冷静沈着。泰然自若。松井のボートレースに対する姿勢を表現するのなら、これらの言葉がピッタリと当てはまる。慌てず騒がず、勝利に向かってあきらめない。3月に尼崎で開催されたSGボートレースクラシックで見せたV劇は、それを体現した格好の例だ。

 「太田君手や井口君の伸びはすごかったね。自分の前検の動きの感じでは正直、優勝できるとは思わなかった」 

 今年初のSG戦の船出は決して順調なものではなかった。それでも、チャンスを引き寄せるために、百戦錬磨の猛者は長年の経験に裏付けされた“五感”を駆使してエンジンの長所を見いだそうとした。

 「エンジンの“音”が良かったのが救いやったね。本体はいいと思ったので調整に励みました。日ごとに乗りやすくなっていったので、次第に優勝を意識するようになっていきました」

 耳を使った判断が功を奏した。そして、尼崎というデビュー当初から相性の良かった水面を味方につけたのも勝因。尼崎では乗りやすさが求められることを熟知しているのだ。

 あきらめない姿勢が流れをグッと松井へシフト。得点率トップだった白井英治が準優で敗退して優勝戦1号艇を手にする。この時のために尼崎イン戦向きの乗りやすい動きにしていたともいえる。好機をモノにできる準備を万全にしているのも松井の真骨頂。あとは、インから会心のスタートを決めてVゴールへとひた走るだけだった。

 「SGで優勝できたので賞金面ではメドがついた。今後はFを切らないようにしていきたいね」

 尼崎でのSG奪取で早くもライフワークにもなるグランプリ(賞金王決定戦)出場は見えてきた。これが精神的余裕を与えることになる。さらに冷静さが増して、より強大な強さが宿るということを意味する。その後の4月児島G2男女バトルMB大賞準V、5月津G1周年記念Vの輝かしい航跡を見れば説明がつくはずだ。

 「まだ(トライアルの)枠番のことまでは考えていないよ。今まで通りのスタイルを崩さずにやるだけやね」 

 尼崎では数々のビッグタイトルを手にしてきた。センプルカップというタイトルになってからの周年競走はまだ制していない。ぜひともコレクションの一つに加えたい。さらに強化された王者が今年の尼崎記念レースをすべてジャックして年末の大一番への大きな弾みとする。

◇魚住、格好の腕試し

 尼崎周年といえば女子レーサーが活躍するイメージを抱く。それを決定づけたのが昨年1月の第60回大会だ。「近松賞」という旧名称での最終戦を飾るのにふさわしい快挙を演じたのが今シリーズにも出場する平山智加。男女混合G1戦では山川美由紀以来、14年ぶりとなる女子V。平山に続けとばかりに、今回は長嶋万記、魚谷香織がチャレンジする。 本紙スポニチが注目するのは魚谷。4月の児島G2男女バトルMB大賞では松井繁、峰竜太ら艇界を代表する猛者たちに混じって紅一点での優出(【5】着)。先月の福岡ボートレースオールスター(笹川賞)では11年尼崎笹川賞以来となるSG2回目の1着。地力強化と、ハイレベルなステージでも渡り合えるところをアピールした。

 「記念に呼ばれることが多くなってきましたが、技術力をアップしないことには勝負にならないですね。記念に出た時は、勉強だと思ってやっています」 

 謙虚な姿勢が功を奏して実を結びつつある。プロペラ調整の引き出しが増えたことも大きい。

 「今年に入って調子はあまり良くなかったですね。3月あたりからペラ調整に正解が出てきました。4月の児島でもそうでしたが、自分の思っている方向にペラが合ってきて足も良くなってきました」 

 今回は腕試しとしては格好の舞台だろう。

 「尼崎はあまり走っていないんですよね。それでも女子王座(09年)で初めて予選突破したのが尼崎で、SG(11年笹川賞)で初1着を取ったのも尼崎。だから水面のイメージはいいですよ。まずは準優に進めるようにがんばりたいです」 

 思い出深い尼崎センタープールなら、ドでかいことをやってのけてくれないか。そろそろ…の予感が漂う。

◇先行予想

 V候補筆頭は尼崎をドル箱とし、3月のSGボートレースクラシック(総理大臣杯)を制した松井繁だ。それに迫る可能性があるのは、地元水面を熟知した兵庫センプル軍団だろう。松井の優勝した先のボートレースクラシックで優出【2】着と気を吐いた鎌田義に、地元ビッグ戦線では好勝負を演じる吉田俊彦の2人が中心となりそう。

 そして、兵庫支部を精鋭集団へとリードしていった魚谷智之が08年大会以来の周年記念V奪還を狙う。金子龍介は5月の六甲賞で地元7節連続優出を逃したとはいえ、水面相性はバッチリ。芝田浩治、山本隆幸、藤岡俊介、高野哲史もスタンバイ。中でも兵庫の実力者が集結した六甲賞で優勝戦1号艇まで駒を進めた(結果【2】着)藤岡に一発ムード。艇界屈指のスタート力は魅力だ。

 回転調整が難しい尼崎では、当地で好成績を残している“センプル巧者”が幅を利かす。3月のボートレースクラシックの予選をリードした白井英治に、前回大会覇者の徳増秀樹、SG初優出が尼崎の峰竜太らは名うての巧者だ。当地でのエンジン出しがうまい坂口周、吉田弘文、杉山正樹らが特注選手だ。

 近況好調組では今年すでに6優勝(7日現在)を飾る前本泰和と、今年の勝率が8・44(7日現在)というハイアベレージをたたき出す茅原悠紀の動向も注目に値する。

 13年1月の前々回大会覇者で女子レーサーフィーバーを巻き起こした平山智加の参戦も楽しみ。尼崎で好成績を収める長嶋万記、近況の地力強化著しい魚谷香織ら女子勢の活躍にも期待した。

◇エンジン評価

 尼崎の現エンジンは4月8日から使用開始された。同時にボートとプロペラも新調。新しくなってからまだ2カ月しかたっていない。故に、まだはっきりとした相場は固まっていない。

 そんな中でも伸び中心にバランスよく噴くのが20号機だ。5月の六甲賞で魚谷智之が土台づくりをして優出(【5】着)。次に手にした渡辺睦広が日本MB選手会長杯で完ぺきに仕上げた。優勝戦では1Mで差し損ねて万事休すかと思われたが、パワーで立て直して【3】着までに押し上げた。少々レースミスをしてもカバーできる逸品だ。

 出足、回り足と実戦足が抜群なのは51、57号機。51号機は5月のグリーンカップで新良一規が力強いプッシュ足でシリーズを盛り上げた。57号機はスムーズな行き足が光る。初おろしの4月鳥取市長杯で地元の白石健がオール3連対優勝。5月六甲賞では藤岡俊介が地元・兵庫の精鋭相手に優勝戦1号艇まで駒を進めた。

 ほかでは、誰が乗ってもそこそこに仕上がる39号機に、5月日本MB選手会長杯で伸びと回り足が秀逸だった60号機(使用者=井上恵一)もオススメする。

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