G1周年記念競走展望

【宮島G1大渦大賞】徳島のエース田村 燃える1号艇

[ 2014年11月3日 05:30 ]

初日ドリームの1号艇に指名された田村隆信
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 鳴門ボートが休催中のため「G1大渦大賞」(鳴門開設61周年記念)は4~9日の6日間、宮島ボートで「G1大渦大賞IN宮島」と題して代替開催される。鳴門周年ということで広島勢5人に対して徳島勢が6人の参戦。初日メーンの渦潮ドリーム1号艇も徳島のエース田村隆信が指名されている。このページは、その田村と“迎え撃つ”山口剛、市川哲也をメーンに特集した。

◆宮島で開催されても“鳴門周年” 「地元のつもりで」

 ダービー(とこなめ)が惜しかった。1回走りの初日、2日目を連勝してV争い必至のムードだったのに3、4日目を【3】【5】【5】と“貯金”をはき出し予選19位、準優“次点”に終わったのだ。

 「準優漏れするような足ではなかったんですけど…。予選最後のレース(4日目11R)で“カド遅れ”したのが痛かったですね」

 勝負強さには定評のある田村がカド4コース発進で珍しく後手を踏んだ。4着でOKだったが、準優ボーダーが通常より上がっていたことが微妙にプレッシャーになったのかもしれない。

 ダービーが終わった時点の賞金ランクは14位。今年からグランプリ(賞金王決定戦)の枠は“18”に増えたこともあり、今月はモチベーションがかなり高い。

 「今年は最初に唐津で記念を優勝して、次の住之江で(周年優勝戦)2等と上々の滑り出しだったけど、中だるみしてしまいました。でも、前期は勝率も残せた(7・93)し、成績は悪くないんですよね。ボクはいつも夏場は良くないんですけど…。鳴門が休催している中でこの賞金ランクは悪くないですよね。いつも(例年)と変わらないと思うし、去年と今年を比べて自分では変わってないと思います」

 田村は11月開催のSGチャレンジカップで優勝2回の実績を持つ。10年前の児島、3年前の大村だ。だから「これからがボクのシーズンです」と笑顔を見せても不自然ではない。そして、11月の第一弾は宮島で開催されるとはいえ“大渦大賞”のタイトルがついた鳴門のG1周年だ。どんな気持ちで臨むのか。本音を聞いた。

 「いつもの宮島と変わらないですよ。ただ、地区選、モーターボート大賞はあるんですけど、この周年のタイトルは獲ったことがないので優勝したい気持ちは十分あります。宮島で開催されても“鳴門周年の大渦大賞”ですから。歴代覇者に名前を残したいですね」

 今まで宮島のG1、G2を走ったときと比べると、気合の入り具合が違うようだ。しかも今回はWドリームの一つ、初日のドリームに選ばれている。それも1号艇だ。

 「宮島の周年でドリームの1号艇になることはないけど、今回は鳴門の周年なんで1号艇に選んでもらえたんだと思います。地元のつもりで頑張りたいですね」

 初日のドリームを走るということは初日1回走りで出番は12R。ペラ調整する時間はたっぷりある。「持ちペラの時と違って今は最初にもらったまま乗ってみて、そこから叩いていく」という田村にとっては好都合と言えるだろう。

 宮島は11年前の49周年で優勝の実績を持つが「好きでも嫌いでもないです。G1で優勝したことはあるけど、あまり走ることがないので…。同じ海水で“うねり”もあるけど、鳴門と全然違いますよ」と話す。前回は7月のMB大賞で441112【3】21という成績。2年6カ月ぶりの宮島で新しいペラ制度になって初めてだったが、及第点の成績を残している。

 ところで、田村といえば“トリックスター”がキャッチコピー。進入のコース取り争いにおいてSG、G1の常連クラスで最も大胆な動きを見せることから命名されたわけだが、これについては「いつもいつも動くわけではないですよ。どこからでも行ける心つもりで準備はしてますけど、コースはルール違反しない範囲で…です。待機行動違反の減点7は痛いですからね」と説明する。

 「よく(鳴門ボートの1マーク上の)高速(道路)を通るんですよ。休催して半年以上になるし、水面を見ると走りたい気持ちになりますね」

 その思いを田村は宮島で開催される“地元周年”にぶつける。

◆GP出場へ 本拠地で巻き返し図る山口

 前々期(昨年11月~今年4月)に勝率8・35をマークして自身初の勝率No.1に輝き、ダービー勝率(昨年8月~今年7月)も瓜生正義に次ぐ第2位で先日のダービー(とこなめ)はドリーム2号艇に選ばれた。

 「ダービーのドリームは初めてです。とこなめに入る前は少し緊張したんですけど、入ってしまえばあまり変わらなかったですね」

 そのダービーは初日ドリームで転覆(選手責任外)。2日目4、5着で迎えた3日目3Rでは落水と不本意な結果に終わった。落水した際に太ももを打って「力が入らなくて…」と途中帰郷。それでも獲得賞金は4000万円を超え(4004万円)、ダービーが終わった時点でグランプリ(賞金王)出場ボーダー18位と約300万円差の27位だ。ちなみに昨年はこの時点で18位だった。

 「去年は前検日に“このエンジンではマズイ”と思ったのは1節だけだったんですけど、今年はエンジン(抽選)での“引き”がずっと悪いんです。それが成績に表れてますね。あらためてボートレースはモータースポーツなんだな…と身をもって知らされました」
 ダービーの後は下関周年に転戦。予選トップ通過の活躍で準優は1号艇だったが、強い追い風に泣いた形で3着惜敗…。それでも賞金ランクは25位と少し上昇している。

 そして迎えるのがタイトルは大渦大賞・鳴門61周年だが、舞台は山口の本拠地・宮島。ここで優勝して、チャレンジカップで優出すればグランプリに届くという形にしておきたいところだ。

 「ダービー前の住之江では準優に乗れなかったけど、内容的には自分のいい部分が出てきた感触がありました。ボクは夏場は我慢、秋以降にペースが上がるので巻き返しはこれからです」

 走り慣れた地元水面でのG1レースなら「一回乗ってみてから調整するようにしています」という通常パターンより早めに調整に向かえるし、初日はドリームの1回走りなので時間的にも余裕がある。意外にも宮島のG1はまだ未Vだけに、今回はチャンスと言える。

 「でも“鳴門の周年”ですからね。優勝しても宮島のG1を勝ったことにならない。だから、そういう燃えるものはないですね。ただ、G1は勝ちたいです」

 今年のグランプリの舞台は山口にとって総理杯(現クラシック)優勝の実績があり、相性のいい平和島だ。「とにかく出たいですね」と、まだ出場をあきらめていない。そのためにも今節は“勝負”だ。

◆勝負の11月 復調気配の市川

 先月、ダービー(とこなめ)前に江戸川から嬉しいニュースが届いた。発信者は市川哲也。G2モーターボート大賞で優勝したのだ。実に5年11カ月ぶりの特別競走V。2コースから差し切ったのだが、その相手(イン)が“江戸川鉄兵”の異名を持つ地元の石渡鉄兵だから価値がある。

 「(優勝戦は)勝てると思ってなかったんですよ。2コース差しは難しいし、相手は石渡クンですからね。でも、思った以上に舟の向きが良くて差しが入ってくれました。そこから先は必死で誰が2等を走ってるかも分からなかった(笑い)」

 この優勝で賞金ランクは57位から36位に浮上。しかし、その後、からつ企業杯→下関周年と“不発”に終わり、32位までが出場できるチャレンジカップ(下関)には届かなかった。

 それでも下を向いている暇はない。「宮島、福岡とG1が2つあるし、11月が勝負ですね」とキッパリ。12月のグランプリシリーズ(平和島)出場へ賞金順位を下げるわけにはいかないのだ。

 「江戸川の優勝で来春のクラシック(尼崎)に行けるけど、その前にもう一つSGに行けるチャンスがありますからね」

 来年6月のグラチャンは地元の宮島で開催される。前年4月~当年3月のSGで優出した者が優先出場できるだけにグランプリシリーズでの優出にも可能性を見いだしたいところだ。

 とくにグランプリシリーズはグランプリのセカンドステージに進んだ12人が不在。優出するチャンスは他のSGより大きい。出場権獲りへ気合が入るのは当然だ。

 10月末で終わった前期の勝率は7・76だった。最高勝率8・51を持ち、賞金王Vやモーターボート記念で完全Vなど輝かしい実績を持つ男だけに、江戸川G2優勝など夏から秋にかけての好ムードを“復活”と言うのはまだ早い。それでも46歳になっての復調は喜ばしい限りだ。

 「ペラを上手に叩けるわけではないのに今まで記念レースではエンジンを出さないと…という気持ちが強かったんですよね。でも、出てなかったらゴンロク(5、6着)でも仕方ない。レースに参加できるように仕上げて臨めればいいと思うようになったんです」
今年、宮島を走ったのはG2のMB大賞(7月)、正月、GW、盆とG3企業杯2回(3月と7月)と伝統の岩田杯(9月)の計7節。優出は5回を数えるが、優勝からは見放されている。

 「結局、ペラで正解は出せなかった。この前の岩田杯は(山崎)智也が抜けた足だったけど、ボクもいい足してたんですよ。ただ、前検日にもらったままだったので自分でたどり着いたわけではないですけど…」

 それでも市川には“スタート力”という大きな武器がある。それが機力面での“妥協”を意識するようになって最近は威力を見せている。「鳴門周年だろうが何だろうが、宮島で開催されるG1は優勝したいですよ」。完全復活をアピールするV劇を見たいものだ。

◆先行予想

 舞台は宮島。タイトルは鳴門周年の大渦大賞。ということで徳島勢の方が広島勢より多いメンバー構成になっている。ただ、徳島勢に“地の利”があるわけではない。「大渦大賞だけど(開催は)宮島ですからね。いつもより気合が入るということはないですね。強いて言うなら、いつもの宮島の記念より徳島(の選手)が多いことぐらいですかね(笑い)」と徳島の“宮島巧者”市橋も言っている。

 それでも本命には「鳴門周年のタイトルをまだ手にしてないので優勝したいですね」と言う田村を指名したい。初日ドリームの白カポック戦をしっかり勝てば弾みもつくだろう。賞金ランク14位でグランプリ(賞金王決定戦)ボーダーの18位に少し余裕はあるが、トライアル第2ステージのシード権取り(6位まで)に十分届くだけにモチベーションは高いはずだ。

 迎え撃つ広島勢は初日ドリームに選出された山口、2日目ドリームの1号艇にノミネートされた辻、そして1カ月前に江戸川でG2優勝を飾って意気上がる市川がV有力候補。ちなみに辻は賞金18位と100万円差の21位、山口は220万円差の25位につけている。

 賞金ランク絡みで注目は他に6位の太田、8位の今村、10位の瓜生、11位の毒島、13位の池田、16位の吉川、19位の田中といった面々。直近の勢いなら下関周年で優勝したばかりの今村、今年のSGで4優出の池田だろう。

 今月末のチャレンジカップ(下関)に下関周年の優出3着でチャレンジカップ選出枠ギリギリで滑り込んだ森高、なんとか粘り込んだ今垣が“ツキ”を生かすシーンがあるかもしれない。

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