【悼む】「記事がおかしい」ラジオ局のスタジオ飛び入り“釈明”も…懐に飛び込めば優しい人

[ 2023年6月3日 04:50 ]

上岡龍太郎さん死去

ラジオでも活躍していた上岡龍太郎さん

 【スポニチ取締役 大阪本社代表・樋口徹】1999年3月、上岡龍太郎さんが長年パーソナリティーを務めるラジオ大阪「歌って笑ってドンドコドン」の最終回の日、本紙は番組が終了する経緯を掲載。関係者にしっかり取材した内容だったが、上岡さんは気に入らなかったらしい。

 番組の生放送中、「スポニチの記事はおかしい」と怒り出した。当時芸能デスクだった私はそれを聴き焦った。上岡さんは翌年に芸能界引退を宣言していた。正月紙面で上岡さんの特集を企画していたのだ。

 舌鋒(ぜっぽう)鋭く、信念を貫くそのスタンスから気難しいとも言われる上岡さん。企画を成立させるまでは逆鱗(げきりん)に触れるのはよろしくない。慌ててラジオ局まで説明に出向いた。

 スタジオに着いた途端、マネジャーの遠藤氏に「上岡さん、こんなん好きだから」と、いきなり生放送中のスタジオに放り込まれた。こんなん好き?なんやねん、それ?絶対怒られると覚悟して入った。

 何しろ怒りの着火点が分からない人だ。生放送の緊張もあり、いきなり上岡さんを「川上さん」と呼んでしまった。「僕、川上のぼる(往年の腹話術師・物まね芸人)と違うで」とニッコリ笑うと、そこからずっと笑顔で私の説明を聞いてくれた。スタジオの外では毎週集まってくる常連リスナーたちが、私の慌てぶりをうれしそうに見ていた。放送後は、このリスナーたちと一緒に飲みに行ったりしていたという。

 こんなん好きとは、こういうことか。飛び込んでくる者には優しかった上岡さん。懐の深さは、その後無事に掲載できた正月企画の引退ロングインタビューでも伝わった。

 最後に直接お話しさせていただいたのは07年の「横山ノックを天国へ送る会」でだった。引退して7年もたっていたのに、その笑顔とトーク力は何も変わっていなかった。もったいない。心からそう思った。今ごろは、あの世で大好きだったノックさんと再会しているのでしょうね。合掌。

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2023年6月3日のニュース