広島・新井監督“究極勝負手”の無安打同点劇 見事な3戦連続粘り腰「全員で戦っている空気感がある」

[ 2023年5月14日 05:03 ]

セ・リーグ   広島4-5巨人 ( 2023年5月13日    東京D )

12回1死満塁、磯村の死球で生還した大盛を出迎える新井監督(右) (撮影・西川祐介)
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 広島は13日、巨人に5―4で逆転サヨナラ負けを喫し、連勝は4で止まった。1点を追う9回に新井貴浩監督(46)が勝負手を繰り出し、4番・マクブルームに送った代打・松山の二ゴロの間に同点。延長12回には代打・磯村の押し出し死球などで2点を勝ち越したものの、その裏に登板した7番手の松本が誤算だった。それでも指揮官は「みんな最後まで諦めない。全員で戦っている」と前を向いた。

 球団タイ記録となる3試合連続の延長戦。今季最長4時間43分に及ぶ死闘は最後の最後に暗転したものの、その過程には今後につながる粘り強い攻撃があった。とりわけ新井監督が繰り出し、ズバリ的中した9回の勝負手は見事だった。

 「ずっと練習してきたので。練習してきたことを、そのまま敢行したらセーフになったという感じです」

 好機を拡大した羽月が振り返る。1点を追う緊迫した場面。敵の守護神・大勢から四球を選んだ先頭・野間の代走に指名され、次打者・秋山の初球に二盗を成功させた。打席の安打製造機は、2球目に絶妙の投前送りバントを決め1死三塁。指揮官は、ここで動く。

 「あそこは勝負にいった。野間がよく出塁したし、羽月もあの場面でよく初球からスタートを切ったと思う。アキ(秋山)も一発でバントを決めて、本当にいい攻撃だったと思うね」

 なかなか快音が響かない4番・マクブルームに代え、切り札の松山投入を決断した。前日に左前同点打、4月28日の対戦でも適時二塁打を見舞った大勢キラー。その4球目、外寄り高めの直球を叩いて二ゴロとすると、三走・羽月が前進守備をかいくぐり生還した。

 「それ(代打)を積み重ねていくだけ。負けたので、また明日」

 サヨナラ敗戦に松山の口数は少ない。しかし、無安打での同点劇が、延長12回の一時勝ち越しにつながる。1死満塁で代打・磯村が押し出し死球、途中出場の堂林も左前適時打で続いた。17人のベンチ入り野手全員を起用する激闘。新井監督は光を見いだしていた。

 「みんな頑張って、最後まで絶対に諦めない、ひっくり返すという姿勢が伝わってくる。全員で戦っている空気感がすごくある」

 38年ぶり2度目の3試合連続延長戦勝利は目前で逃したものの、3試合連続で劣勢を追い付いた粘り腰は特筆もの。言葉と行動で選手の心身をケアし、巧みに背中を押して、戦力を余すところなく活用する。新指揮官が振る采配、人心掌握術もまた、特筆ものだ。(江尾 卓也)

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