「忘れてた」600勝 阪神・岡田監督が好む“知恵比べ”「そら、面白いで。昔の落合と」

[ 2023年5月14日 05:15 ]

セ・リーグ   阪神7-2DeNA ( 2023年5月13日    甲子園 )

監督通算600勝を達成し、記念ボードを手にする岡田監督(撮影・北條 貴史)
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 記念の勝利を気に留めないところが、いかにも岡田監督らしい。阪神で5年、オリックスで3年、そして再びタテジマを着て、プロ野球史上25人目の600勝に到達。場内の岡田コールを浴びながら雨中の記念撮影をしたものの「ピンと来ないなあ」「週初めはあと3勝と聞いてたけど、最初に2つ負けて忘れてた」といった言い回しに終始した。

 試合前、悩めるノイジー、ミエセス、梅野にアドバイス。その一人のノイジーが活躍して勝利した。新たなウイニングボールが、兵庫県内の自宅の展示エリアに加わった。オリックス時代の11年に500勝して以来の記念ボールだ。

 長い空白期間だった。12年に同チームを去ったあと、グラウンドから離れる日々。前回監督時は犬を飼っていたが、鳴き声がなくなって10年近くになる。新しい“家族”を迎え入れなかったのは、「女房と2人やから、どこにも出かけられへんようになるやろ」。旅行を楽しみ、たまに会う孫2人に癒やされるセカンドライフに、近年はなじんでいた。

 しかし、野球人の血はうずき続けた。600勝で、印象的なシーズンは「しびれる試合が多かったよな」という優勝した05年。落合・中日とし烈な勝負を繰り広げた一年だ。

 「俺は勝負事が好きやで」と豪語する勝負師肌ゆえ、ユニホームから離れた期間、当時のような勝った負けたのヒリつくような毎日に焦がれていた側面は、確かにある。しかし、本当に求めているのはそれではない。

 「そら、知恵比べの方が面白いで。俺はずっと相手のベンチと勝負をしてるよ。昔の落合と、とかな。打った、投げたは誰が見ても分かるやろ。そういうのじゃなしにな」

 一手先を読んで作戦を立て、適材適所の用兵をするベンチワークこそ真骨頂。今も昔もサスペンスドラマを愛するのは、犯人を捜して脳を働かせられるから。知の勝負こそ、監督復帰で最も求めていたものだ。

 記念の一日にDeNAと並んで首位に再浮上したものの喜びはない。セの他球団と一通り対戦した感想は「まだ、あまり張り合いはないよな」。他チームのベンチに恐れなし。この自信のもとに、岡田阪神は戦っている。 (倉世古 洋平)

【データ】
 ○…岡田監督(神)が13日のDeNA戦に勝って、史上25人目の監督通算600勝に到達。内訳は阪神(04~08、23年)で412勝、オリックス(10~12年)で188勝。
 ○…阪神監督での412勝は(1)藤本 定義514勝(2)吉田 義男484勝(3)松木謙治郎460勝に次ぐ歴代4位。岡田監督は来季までの2シーズンで122勝以上すれば歴代単独トップ。なおこれまでの監督8シーズンで61勝未満は、途中休養したオリックス最終年の12年50勝だけ。

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