元日本ハムコンディショニング担当・白水直樹氏 大谷へ6年前の“怒り”糧に「日本中沸せて」

[ 2023年3月10日 04:50 ]

WBC1次ラウンドB組   日本8-1中国 ( 2023年3月9日    東京D )

日本ハム時代の大谷をコンディショニング担当として支えた白水直樹氏
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 【YELL from 恩人】世界と戦う侍戦士を支えた人々がいる。ゆかりの深い人物から侍ジャパンメンバーへの思いを紹介する「エール」。第1回は04~10、14~17年に日本ハムでコンディショニング担当を務め、大谷と二人三脚で歩んできた白水直樹氏(44)。17年の前回大会を右足首の故障で出場辞退した悔しさを知る恩人は、WBCの舞台に立った大谷の活躍を期待した。

 白水氏にとってもWBCは、6年前の悔しさを晴らす舞台だ。「投打で日本中を沸かせてほしい。優勝目指して頑張ってください」と大谷にエールを送った。

 前回17年大会直前の1月。千葉・鎌ケ谷の2軍施設のロッカールームは緊張感に包まれていた。当時、右足首痛に苦しんでいた大谷の出場可否は決まっていなかった。球団とトレーナー陣は将来を考え、無理をすべきではないという考えで一致。大谷の本心を探るために、白水氏が“派遣”された。大谷と2人きり。白水氏はその時のことが忘れられないという。「トレーナーとして今、無理をするタイミングではないと思う。次の大会には出場できる。どう思う?」とチーム方針をやんわり伝えた。大谷は「それは全然、チームに任せます」。驚くほどあっさりした答えは、白水氏への信頼が厚いからこそだった。

 だが、その右足首の故障で大谷が一度だけ、怒りをぶちまけたことがあった。同年シーズン中盤の福岡遠征での、栗山監督、白水氏が見守ったブルペン投球。投球時に軸足の右足を強く蹴れずに浮いてしまい、体重が前に乗らない状態が続いていた。球離れが早く最後のひと押しが出ない。白水氏が「前に入っていく動きを出そう。その方が前に力が伝わると思うよ」と言うと、大谷が声を荒らげた。「分かっていますよ!だけど、できないんですよ!」。栗山監督も「あんなあいつは見たことねえな。それくらい悔しさとかあったんだろうな。でも、信頼する人にしかああいうこと言わないから」と回想する出来事だった。

 当時、登板翌日でも、休日でもジムでのサポートを頼まれ「そこまで継続している選手はいなかった。完全にメジャーや、その先を見ていた。フィジカルがないと間に合わない。あの時から逆算が始まっていた」と白水氏。メジャー移籍前の17年終了後に右足首を手術し、痛みは完治した。出場辞退から6年。大谷の悔しさを知る白水氏にとっても感慨深い、大谷の侍のユニホーム姿だった。(柳原 直之)

 ◇白水 直樹(しろず・なおき)1979年(昭54)2月5日生まれ、札幌市出身の44歳。駒大岩見沢3年春に選抜大会出場。駒大を経て、筑波大大学院修了。04~10、14~17年に日本ハムでコンディショニング担当を務め、ダルビッシュや大谷のトレーニングをサポート。19~20年は巨人でトレーニングコーチ。昨年10月、都内にパーソナルジム「PROGRESS Sports Performance Lab.」をオープンした。

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