押し出しで力尽きた負けず嫌いの右腕 夏へのリベンジに燃える

[ 2022年3月23日 09:00 ]

山梨学院・榎谷
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 雨天順延を経て、19日に選抜高校野球大会が開幕した。21日の大会3日目第1試合では、今大会の1回戦で唯一の同地区対決となる木更津総合(千葉)―山梨学院の関東対決。お互い一歩も譲らない展開で延長13回タイブレークの末、木更津総合に軍配が上がったが、最後までマウンドを他の投手に譲らなかった山梨学院のエース右腕・榎谷礼央投手(3年)の投球も見事だった。

 積極的に内角を突く強気の投球。初回に内野ゴロで先制を許すも、その後は修正した。最後は押し出し四球で力尽き、155球を投げて9安打2失点(自責1)だったが、適時打による失点はなかった。「最後は気合で抑えようと力んでしまった」と悔やんだ。

 静岡県出身。小さい頃から負けん気が強い。小学生の時も、給食で残った果物をクラスメートと取り合いになり「じゃんけんを“やり直そう”とか、勝つまでやってました。負けるのが嫌でした」と振り返る。浜松商(静岡)で甲子園に出場した経験があり、アルプス席で応援した父・優史さん(45)も「(小学生時代の)リトルリーグではショートを守ってたりした時に、他の投手の調子が悪いと“自分に投げさせろ”とか言ってましたね。でもそれでちゃんと抑えてきたりした」と回顧した。

 そのリトルリーグでは監督と選手の間柄だったこともあり「厳しく育てました」といい、榎谷もセンバツ開幕前の取材では「褒められた記憶はあまりないです」と笑っていた。それでも、この日の力投に「素晴らしいですね。僕なんか負けてます」と息子の勇姿を見守った。

 榎谷は相手投手の越井颯一郎(3年)との投げ合いに「越井君と9イニングを投げ合えたが、投げ勝てなかった。切り替えて夏に戻ってきたい」と語った。その姿は負けた悔しさよりも、むしろ夏へのリベンジに燃えているように感じた。負けず嫌いの右腕ならきっともう一度、この聖地に戻ってくるはずだ。(記者コラム・田中 健人)

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2022年3月23日のニュース