牛島和彦氏 巧みな投球も力勝負もできる奥川 悔しい初登板から1年、“3つの課題”クリア

[ 2021年11月10日 22:30 ]

セCSファイナルS第1戦   ヤクルト4ー0巨人 ( 2021年11月10日    神宮 )

<セCSファイナルS ヤ・巨>5回2死一、三塁、八百板を三振に仕留め笑顔の奥川(右)(撮影・平嶋 理子)
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 奥川はただ制球がいいだけではなく2年目とは思えない巧みな投球をした。直球は少しシュート回転させるものと素直な真っすぐ。フォークはストンと落ちる球とチェンジアップ気味に打者の外に流れて落ちていく球。これにスライダー系も使い分け相手につけいる隙を与えなかった。

 3点リードの6回、対松原が圧巻だった。絶対に先頭を出したくない場面。初球に115キロの緩い球で簡単にストライクを取った。早めに追い込むために次の球はストライクゾーンに投げたいところだが意識的に膝元へボールになるスライダーを投げ空振り。カウント0―2と追い込んだ。3球目はボールになる直球。4球目も内角低めのボールになるスライダーで空振り三振だ。投げたストライクは初球の緩い球だけ。ボール球を使いこなして勝負どころを乗り切った。若いのに投球のコツが分かっている。

 5回2死一、三塁では八百板をカウント3―1から高めの直球で空振りを取って、最後は外の直球で見逃し三振。フルカウントになっても甘くならない。

 ちょうど1年前、奥川のプロ初登板を評論した。私が指摘した課題は(1)直球がシュート回転する(2)セットポジションで球速が落ちる(3)下半身が使えていない。もっと打者寄りでボールを離せないか、という3点。(1)はそのシュート回転を利用するほど直球を操れている(2)は球速は全く落ちない(3)はフィニッシュで右肩が捕手の方向を向き、打者寄りでボールを離せている。1年で3点の課題を全てクリアし、98球で“プロ初完封”。日本シリーズ、来季に向け大きな収穫になったと思う。

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2021年11月10日のニュース