関本賢太郎氏が提言 失策12球団ワースト「86」の阪神 減らすには原因究明し、厳しい状況想定せよ

[ 2021年11月10日 07:00 ]

本紙評論家が振り返る矢野阪神3年目の「光と影(2)」

関本賢太郎氏
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 スポニチ本紙評論家陣による連載「矢野阪神の光と影」の第2回は関本賢太郎氏が今季の守備を総括する。同じ143試合制だった一昨年から16個減の86失策だったものの、12球団ではワースト。原因究明を徹底した上で、各選手が課題克服に取り組むことを提言した。

 今季を象徴するかのようなエラーだった。巨人とのクライマックスシリーズ・ファーストS第2戦。2点優勢の3回、中野が先頭・吉川のゴロをファンブルした。鋭いダッシュで捕球を試みたが、その分、バウンドが合わなかった。来季へ向けて重要になってくるのは、吉川の一塁到達タイムに対してどのようなアプローチをしたのかということだ。

 仮に打ってからのタイムが3秒9だったとする。アウトにするためには、どれぐらいのダッシュが必要で、捕球してからどれぐらいのタイムで送球するべきなのか。それは、打球の前後左右によっても変わってくるもので、3秒9の打者走者をアウトにできるすべを徹底的に体に染みこまさなければならない。到達タイムが0秒1変わるだけで、感覚は大きく異なってくる。そのことを中野には知ってほしい。

 チーム全体の失策数は一昨年の102から、86まで減少した(昨年は120試合で85)。遊撃・中野が17で、三塁・大山が10と三遊間コンビで27を数えたが、評価の対象になるのは数字よりも、失策の中身だ。それが、ファンブルしてのものなのか、送球ミスしてのものなのか、原因を究明することが何よりも重要。自らの特性を知り、その中身によって課題を克服するための練習メニューを工夫していかねばならない。

 試合に出る中でエラーはつきものだが、プロの内野手として送球ミスは致命的で極力防がねばならない。大半は捕球の際に足を使えないことで棒立ちになったり、バランスを崩して後ろ体重になった状態から無理やりスローイングしてのものだろう。

 守備練習は良い体勢で捕球して、良い投げ方をするために繰り返し行われる。だが、実際のエラーは、そうならない場合に起こってしまうのだ。ならば、意図的にバランスの悪い体勢をつくったり、慌てた状況で投げる練習をしてみればどうだろうか。そうすることで、守備の引き出しを増やすことも可能だし、“これで投げてしまえば絶対に送球ミスになる”という状態を知ることにもつながっていく。

 克服すべき課題にスペースを割いてきたが、中野の守備範囲は広く、何度も投手を助けていたのは紛れもない事実。失策そのものよりも、好捕してヒットをアウトに変えた場面の方が確実に多かった。来季以降、遊撃の定位置を確保するためには、より堅実な守備が求められる。平凡な打球をいかに確実にアウトにできるかを、追い求めてほしい。

 《少ない奪三振も影響か》阪神投手陣の今季奪三振数986はリーグ最少。最多のヤクルト(1129)とは143も差があった。青柳やガンケルら打たせて取るタイプが多いことが守備機会の増加につながり、失策数にも影響したとみられる。中野の遊撃守備率・970は、同じ25歳シーズンでは06年鳥谷の・971(21失策)とほぼ同じ。鳥谷は07年・983、08年・980、09年・990と守備率を上げたが、中野はどうか。

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