大谷翔平を申告敬遠したマリナーズの右腕セワルドは生粋の大谷ファン グラウンドで交わした“約束”とは

[ 2021年9月30日 05:35 ]

大谷を絶賛したマリナーズの救援右腕セワルド
Photo By スポニチ

 9月24日のエンゼルススタジアム午後4時過ぎだった。マリナーズの救援右腕セワルドは左翼グラウンドでキャッチボール中の大谷を見つけた。タイミングを見計らい、勇気を出して、声をかけた。時間にして2、3分。別れ際には満面の笑みを浮かべいた。

 「“素晴らしいシーズンを過ごしているね。おめでとう”と伝えたんだ。あと、僕は以前に彼のボブルヘッド(首振り人形)をこの球場でゲットしたんだけど、今季最終カードでエンゼルスがシアトル遠征に来る時にボールとそのボブルヘッドにサインをしてもらうという話をしたんだ。かなり興奮しているよ」

 その夜。1点リードの9回1死走者なしの場面でセワルドは大谷と対戦した。2ボールとなったところで、ベンチの指示で申告敬遠。この日の大谷は2つの申告敬遠を含む4四球でスタンドは大ブーイングに包まれた。「勝負したかったけど仕方がないよ。僕たちはプレーオフにいくために毎日勝たなければいけないんだ。彼が本塁打を打って同点に追いつく可能性があるのに、ストライクをたくさん投げることはできなかったからね」。今季からマ軍でプレーする31歳のセワルドは29日(日本時間30日)試合前時点で今季59試合に登板し、9勝3敗11セーブ、防御率2・77のキャリアハイの成績を残すが、今季は大谷に1発を献上していた。チームは01年以来、20年ぶりのプレーオフ進出のために1試合も負けられない状況。決して打たれるわけにはいかなかった。「本塁打を打たれても追いつかれない場面ならみんな彼と勝負したいだろうね。ファンは本塁打王争いをしている彼の本塁打を見たいし、僕も彼の本塁打を見たいくらいだ。(同地区のため)彼のような打者と1シーズンに20試合も対戦しなければならないとても大変なことだ。十分なリードがあれば次は是非勝負したいね」。大谷のことを話すセワルドの目は野球少年のように輝いていた。

 何を隠そうセワルドは生粋の「大谷ファン」だ。忘れられないシーンがあるという。7月9日。Tモバイル・パークで行われた一戦。大谷が右翼4階席のアッパーデッキに届く特大33号ソロを放った。「僕の人生であんな打球を見たのは、僕がメッツにいた頃の2017年にヤンキースのジャッジが打った本塁打を見て以来だったね。中継のカメラが大谷の打球を見失ってたよね?僕はブルペンにいて、一番打球がよく見える位置で見ていただけど、とても荘厳(pretty majestic)だったよ。信じられなかった」。データ解析システム「スタットキャスト」によれば、打球飛距離は463フィート(約141メートル)を計測した。「100マイル(約161キロ)の剛速球を投げて、500フィート(約152メートル)近い大飛球をかっ飛ばすことができる。まるでリトルリーグの選手みたいで、メジャーリーグでそんなことをできる選手はいない。彼は信じられない選手なんだ。投手を選ばなければならないとか、野手を選ばなければならないとか言っている小さな子どもたちにとっても見ていて刺激になるよね。リーグで一番の選手が投打二刀流でプレーしているやっているんだから。だから大谷の存在は野球界にとっては素晴らしいことだと僕は思うんだ」。セワルドもきっと大谷に負けないくらい野球が好きなのだろう。

 「今、リーグのトップ10選手を見てみると、日本選手、ラテン系選手、黒人選手などいろいろな選手がいるよね。野球の素晴らしさは、出身地に関係なく、トップのメジャーリーガーになれることだと思うんだ」。セワルドは人気に陰りが見える野球界の将来も危惧していた。同地区のライバルであろうと大谷の二刀流での活躍は、一人の野球人としてうれしくもあった。

 「もちろんオールスター戦も本塁打競争もテレビで見ていたよ。凄かったよね。彼は間違いなくスーパースターだ。もし、僕がMVPの投票権を持っていたとしたら、彼に投票するね」。マリナーズは同日時点でプレーオフ進出圏内のレッドソックスまで0・5ゲーム差に肉薄。残り4試合。日替わりで抑えを任されることもあるセワルドは「今の目標はプレーオフに行くこと。それだけだ」と力強い。

 次に会う時は悲願のチャンピオンリングとともに、大谷にサインをしてもらったボブルヘッドを自慢気に見せてほしい。(柳原 直之)

続きを表示

2021年9月30日のニュース