【新井さんが行く!】稲葉監督らしい侍選考 チーム力を高めるため大切にしたのは個の力ではなく「和の力」

[ 2021年7月6日 05:30 ]

新井貴浩氏
Photo By スポニチ

 稲葉監督らしい選考だと感じた。東京五輪に挑む侍ジャパン。いまの調子だけを見て選んでいない。監督に就任した4年前の夏から、五輪を見据えて準備してきた。中長期的な視点から、多くの選手たちを見てきた積み重ねだと思う。

 故障で辞退せざるを得ない選手もいたが、優勝した19年秋のプレミア12を戦ったメンバーがベースになっている。当時の稲葉監督も「本当にいいチームになってきた」と喜んでいた。苦しさや喜びを共有した仲間とは絆が深まる。また一緒にやりたい…という気持ちに共感できる。

 代表候補に挙がるほどの選手は誰もが一流の技術を持っている。極端に言えば、誰が入っても、そん色はない。そんな選手たちが集まり、チーム力を高めるには、一つになれるかどうか。大切にしたのは、個の力ではなく、和の力だと思う。

 選ばれた選手たちも分かっていて、監督のために、チームのために、それぞれが何ができるかを考えているはずだ。初めて代表入りした選手もいる。キク(広島・菊池涼)は代表歴も長い。うまく雰囲気をつくり、融合してくれると思う。

 五輪の野球は08年の北京以来だ。前年秋の台湾での予選から稲葉さんとは一緒だった。台湾での苦しい戦いを勝ち抜き、一体感が生まれた。もう一度、このメンバーで戦いたいと感じた。稲葉さんには「代表の重み、日の丸を背負う重みを感じてプレーしないといけない」とよく言われた。4位に終わり、一緒に悔し涙を流した。宿舎の部屋では宮本慎也さんからも「俺たち、日本へ帰れないな…。日本を通り越して、もっと南へ向かおうか」と言われて、一緒に落ち込んだ。

 あのプレッシャーを知っているから、簡単にメダルを…とは言いたくない。特に日本で開催される大会。プロ野球を代表する選手たちが必死になって、泥まみれになって戦う姿を見せてくれたら、うれしい。自然と道は開け、結果もあとから付いてくると思う。普段の評論や解説では両チームを公平に見ることを心がけているけど、今回だけは応援団として全力で応援したい。(スポニチ本紙評論家)

続きを表示

2021年7月6日のニュース