【キヨシスタイル】破壊力と機動力の融合 西武・辻采配に拍手

[ 2018年10月2日 10:30 ]

胴上げされる西武・辻監督
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 うらやましいなあ。西武の辻監督。私が理想としていた打線をつくりあげ、開幕から一度も首位の座を明け渡すことなくゴールを駆け抜けた。

 本塁打王6度のおかわり君、中村がいる中で不動の4番に抜てきした山川を中心とした破壊力満点の一発攻勢。掛布、バース、岡田のクリーンアップが打ちまくった1985年の猛虎打線とイメージをダブらせて見られがちだけど、大きな違いがある。

 機動力だ。85年の阪神はリーグトップのチーム本塁打219本に対し、チーム盗塁数はリーグ5位の60。一方、今年の西武は10月1日現在、チーム本塁打193本で2位のソフトバンクを1本上回り、チーム盗塁数128もトップだ。

 辻監督といえば、忘れもしない87年の日本シリーズ第6戦。秋山幸二の中前打でクロマティの緩慢な動きを突き、一塁から一気に生還した姿が目に焼き付いている。巨人の一塁を守っていた私は野球の質の差にがくぜんとさせられた。

 その機動力野球の申し子が山川ら大砲にのびのびと打たせる一方で、1番に秋山、2番に源田、9番に金子侑と走れる選手を配置。どこでも守れて走れる外崎も9月に入ってケガで離脱するまで6番に入れて、相手をかき回した。

 ひと振りで試合を決める破壊力と厳しい展開の中で1点をもぎ取る緻密な機動力の融合。相手にとってこんな嫌なことはない。

 外国人選手を使うとしてもメヒアを7番以降に入れる、ほぼ純国産打線。セ・リーグ3連覇を果たした広島に似ている。こうやって勝つチームをつくっていくんだよという手本を見せてもらっているような気がするね。

 メンバーが固定していて1番から9番まで名前が言える数少ないチーム。みんな明るく、独特のキャラクターを持ってるのも魅力だね。選手個々のキャラでお客さんを呼べるっていうのもプロとして必要なことだ。

 理想型の打線がチーム防御率リーグ最低の投手陣をカバーし、「野球は投手力」という通説を覆した西武。選手の能力、個性を引き出し、明るく一つにまとめた辻采配に拍手を送りたい。 (スポニチ本紙評論家・中畑 清)

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2018年10月2日のニュース