高野連「200年構想」の意味 落日への危機感

[ 2018年7月4日 07:00 ]

高校野球の今、そして次の100回へ(5)

今夏の主役は大阪桐蔭の根尾か?それとも…?
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 日本高野連は6月29日、全国の野球部員数と加盟校数を発表した。部員数は2003年以来15年ぶりに16万人を下回り、加盟校数は13年連続の減少。少子化の影響と、子供の野球離れを受け止める日本高野連は、夏の選手権が100回を迎えた今年、「高校野球200年構想」の事業を開始した。強い危機感を抱き「次の100回」へ向かう。(高校野球取材班)

 日本高野連が発表した5月末時点の全国の硬式野球部員は、昨年度より8389人少ない15万3184人。4年連続の減少で、1年生5万413人は平成以降最少だった。

 少子化の影響は高校野球でも色濃くなってきている。そしてスポーツの多様化で、少年少女みんなが野球をやる時代もとっくに過ぎた。各校への調査では「他競技が野球の人気を上回ると思うか」の問いに、7割以上が「既に上回っている」「上回る可能性がある」のいずれかを回答した。保護者が送迎の負担などを憂慮し、野球を敬遠する傾向も見られる。現場では強い危機感が広がっている。

 日本高野連は16年11月に「高校野球200年構想協議会」を立ち上げ、話し合いを重ねてきた。今年5月に5大目標と24事業を発表し、会見した日本高野連の八田英二会長は「少子化もあるが野球離れが進んでいる。子供たちが野球をする環境が少なく、キャッチボールをしている姿を見ない。何とか打破して底辺を広げたい」と力を込めた。各都道府県連盟の野球普及事業に今後、財政的な補助を行っていく方針だ。

 埼玉県高野連の高間薫事務局長(元理事長)は15年に社会人入学した筑波大大学院での研究で、高校サッカーと高校野球の競技人口が逆転する転換点を目の当たりにした。強烈な危機感を覚えたという。

 「野球は特別という意識を変えないと。いろんな競技の中から野球を選んでもらうためにアピールしなければいけないと思った」

 教育の現場に横たわる問題も、その目で見ている。部活動に関わる教員の長時間勤務が常態化。「ブラック部活」「働き方改革」がキーワードとなり、負担軽減のため「社会体育」として学校の部活動を地域のスポーツクラブと一体化させる提言が出てきている。「このままでは高校野球部は大都市圏でも1県数十校で、クラブチームが大半となってしまう。夏の全国高校選手権は“全国U―18クラブ大会”になってしまうかもしれない」。高校の野球部が競い合う「高校野球」を守るため、資料を作成し、理事長会や県レベルで警鐘を鳴らしてきた。

 最多の部員1万355人を抱える東京都高野連ですら、相当な危機感を募らせている。武井克時理事長は「今272校ある加盟校がいつか100校台に割り込んでしまったり、1県1代表が昔のように2県1代表になってしまうことだって考えられる」。中学生選手の著しい減少を見て取り「下の世代へのアプローチが必要。裾野を広げなければいけない」と話す。

 1915年、全国高校野球選手権の前身となる全国中等学校優勝野球大会が豊中グラウンドで産声を上げた。ひたむきにプレーする球児の姿は見る者の心を揺さぶり、ふるさとに希望を与えてきた。武井理事長は言う。「社会人として必要な礼節を教えている。これがあったから高校野球は今も続いている。200年を見据えながら、まずは“10年構想”くらいで地道にやっていかないと」。200回の時に高校野球は存続できているのか――。今、正念場を迎えている。 =終わり=

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