【内田雅也の追球】金本監督見えた信念 ずらり並んだ若手、育成と勝利両立

[ 2016年10月1日 10:30 ]

<神・巨>9回1死一塁、原口は左前打を放つ

セ・リーグ 阪神2-1巨人

(9月30日 甲子園)
 1年前、掛布雅之が雑誌『Number』(2015年9月24日号)で興味深い話をしている。阪神の創設80周年を記念した吉田義男、岡田彰布との対談だった。

 「最近、育成の現場で感じることは、ちょっと語弊があるかもしれませんが“2軍で育てるのは無理”ということです。ある程度のレベルまではいっても、育つのは1軍なんです」。当時はGM付育成&打撃コーディネーター(DC)。オフに2軍監督に就任する、その前だった。

 吉田が「その通りや。絶対、上(1軍)で育ちます」と応じている。

 掛布はソフトバンクの柳田悠岐を例にあげながら「2軍での成績を見ると、大概大したことない。やっぱり上で使わないとダメなんだ」と語っている。柳田が1軍に定着する前年(11年)の2軍成績は打率・291、13本塁打だった。

 この論法は正しい。ルーキー級から1A、2A、3Aと育成していくメジャーリーグでも「マイナーの数字にとらわれるな」と言われている。

 ただ、掛布が案じていたのは「今はそういう環境がなかなか与えられない」だった。勝利にこだわるため、育成に重きを置いた選手起用がおろそかになる。二律背反のようなジレンマに陥る。

 だが今季は違った。監督・金本知憲は開幕から若手登用で通した。しかも「育てるため」などと言い訳せず「勝つための起用」と言い続けた。

 シーズン最終盤まで来ての、この夜の先発メンバーなど象徴的だ。ずらりと若手が並んだ。信念が見える。両軍ゼロ行進で進んだ試合終盤の継投には育成も勝利も目指す姿勢が見える。

 岩崎優が失点したが、9回裏にひっくり返して見せた。高山俊、原口文仁に福留孝介、鳥谷敬、最後に俊介と若手もベテランもかみ合っての逆転サヨナラである。育成と勝利が両立した試合だったと言えるだろう。

 「良かったね」と試合後、ヘッドコーチ・高代延博が言った。「この1軍の舞台でやってこそ選手は育つ。2軍とは全く違うんだ。しびれるような試合がある。ヒーローになって感激を味わい、多くの失敗で悩み、落ち込んだ。この経験を必ず生かす。オレらもそういう気でいるよ」

 監督もコーチ陣もほぼ同じ陣容で金本体制2年目に向かう。1日の最終戦。1軍で育った選手たちの集大成を見せてもらう。 =敬称略=(スポニチ編集委員)
【試合結果】

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