龍谷大平安 春夏100勝王手 「ゆっくり足上げ」市岡スクイズ外し完投

[ 2016年3月29日 05:30 ]

<龍谷大平安・明石商>7回1死三塁、明石商・大田はスクイズを試みるが龍谷大平安・市岡に外され三振併殺。明石商は度重なるバント失敗が響いた

第88回センバツ高校野球準々決勝 龍谷大平安2―1明石商

(3月28日 甲子園)
 準々決勝4試合が行われ、4強が出そろった。2年ぶり2度目の優勝を狙う龍谷大平安(京都)は延長12回の末、明石商(兵庫)に2―1でサヨナラ勝ち。市岡奏馬投手(3年)が1失点完投で吉高壮投手(3年)との投手戦を制し、史上2校目の春夏通算100勝に王手をかけた。初出場の秀岳館(熊本)も木更津総合(千葉)に2―1で逆転サヨナラ勝ち。高松商(香川)、智弁学園(和歌山)も4強入りした。29日は休養日となり、30日に準決勝2試合が行われる。

 雄叫びを上げながら、ホームに走った。降りしきる雨が気持ちいい。三塁走者の市岡は小川の左中間を破る一打で歓喜の瞬間をマウンドではなく、本塁で迎えた。延長12回、2時間30分の死闘。明石商・吉高との投手戦に決着をつけた。

 「延長戦できつかったですけどアドレナリンが出ていたのか、まだ興奮が収まりません」。10回に先頭で左前打。2死満塁としたが、小川が凡退した。市岡の心は折れない。12回先頭でこの日3安打目となる右翼線二塁打。再び2死満塁で打席に立った小川が打って、生還した。「打線を信じて投げるだけだった。粘れた」。175球の1失点完投に胸を張った。

 試合の流れを引き寄せたのも、エースの洞察力だった。0―1の7回1死三塁、2ボール2ストライク。ここで明石商はスリーバントスクイズで2点目を奪いにきたが、市岡は冷静だった。

 「1点取られたら負け。(スクイズの)雰囲気を感じたのでゆっくり足を上げ、三塁(走者)を見ました。内野から(走ったという)声もありましたから」。左打者の大田が最も手の届かない外角低めに直球を投げた。大田はバットに当てられない。ショートバウンドになっても、捕手の竹葉が止めてくれた。三振併殺で窮地を脱し、その裏の同点劇につながった。

 極限で見せた集中力は、ソチ五輪フィギュアスケートで金メダルを獲得した羽生結弦の影響を受けた。「オンオフの切り替えや、表情の違いも凄い。自分で自分を超えている」。氷上の絶対王者を見習い、市岡はマウンドで落ち着きを払った。ピンチを切り抜けると、喜びを爆発させた。

 明石商は昨秋公式戦で57犠打(犠飛含む)。出場32校中最多を誇るが、市岡は8回無死一、二塁、10回無死一塁でも送りバントを失敗させた。一塁・橋本、三塁・冨田も猛チャージでプレッシャーをかけて貢献。2試合連続無失策となった。

 史上2校目の春夏通算100勝に王手をかけ、原田英彦監督は目頭を押さえ「よく守ってくれた」と称えた。連覇を狙った昨春のセンバツは1回戦敗退。2年ぶりの優勝へあと2勝とし、エースは「先輩の悔しさを晴らすチャンス。100勝を達成することがゴールではなく、100勝を通過した上で優勝したい」と誓った。 (吉仲 博幸)

 ≪史上初準々決勝2戦連続サヨナラ≫準々決勝で龍谷大平安と秀岳館がサヨナラ勝ち。準々決勝4試合のうち2試合がサヨナラ決着は87年(PL学園、関東第一が勝利)、98年(PL学園、日大藤沢)以来3度目。連続した2試合は初めて。

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