釜石 ガッツポーズをしない理由…甲子園で伝えた様々な「感謝」

[ 2016年3月29日 09:00 ]

<釜石・滋賀学園>釜石ナインはアルプススタンドやバックスタンドの客に向かって一礼する

 第88回選抜高校野球大会(甲子園)は4強が出そろい、大詰めを迎えた。今年も数々の熱戦が繰り広げられているが、中でも1回戦の釜石(岩手)―小豆島(香川)の21世紀枠対決は注目を集めた。釜石は2回戦で滋賀学園に敗れて姿を消したが、プレー以外の面でも強く印象に残った。

 春夏の甲子園では、毎試合前に室内ブルペンで選手や監督らを取材する時間が設けられている。ベンチ入りメンバー18人は背番号順に整列し、ベンチ外のサポートメンバー数人やマネジャーは室内の隅で待機していることが多い。ところが、釜石の取材で室内ブルペンに入ると様子が違った。

 ベンチ外の選手が入り口付近に整列し、50人以上の記者やアナウンサー一人一人に対し「おはようございます」と元気よく挨拶していたのだ。取材後にも「ありがとうざいました」と丁寧にお辞儀していた。他のチームでは見ない光景だった。

 釜石の部員数はマネジャー1人を除くと23人。佐々木偉彦監督(32)はセンバツ開幕前、ベンチ入りできない5人について「この子たちが本当に大事になる」と気にかけていた。甲子園のベンチに入れない悔しさやもどかしさを胸にしまい、自分の役割を考えてサポート役に徹する姿はとても清々しく映った。

 グラウンドでの姿も目を引いた。釜石の選手は適時打を打ってもガッツポーズをしなかった。「相手チームに敬意を払うため」だという。試合後には自軍側のアルプス席へ一礼した後、反対側のアルプス席や内野席にも頭を下げていた。様々な「感謝」の思いが伝わってきた。小学5、6年時に東日本大震災で被災し、未曾有の困難を乗り越えて、堂々と戦った釜石ナイン。プレーだけでなく礼儀正しい振る舞いや周囲を敬う姿も多くの人に感動を与えたはずだ。

 4強を目標に掲げていた菊池智哉主将(3年)は「また私立に勝てなかった」と悔しがった。夏に戻って来るためには、花巻東や盛岡大付など岩手県内の強豪私立校の壁を乗り越えなければならない。この春の経験をどう夏につなげていくのか、今から楽しみである。(記者コラム・青木貴紀)

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