侍・ヌートバー 攻守で鼓舞した反撃口火打&気迫美技 全力プレーで「快く受け入れてくれた家族」引っ張る

[ 2023年3月11日 05:05 ]

WBC1次ラウンドB組   日本13ー4韓国 ( 2023年3月10日    東京D )

<日・韓>5回、飛球を滑り込んで好捕するヌートバー(撮影・白鳥 佳樹)
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 侍ジャパンは10日、カーネクストWBC1次ラウンド東京プールの韓国戦に13―4で大勝した。序盤に3点ビハインドを背負ったが、初の日系代表選手となったラーズ・ヌートバー外野手(25)が反撃ののろしとなる適時打を放つなど、走攻守に熱いプレースタイルでチームを鼓舞。WBCでは侍ジャパン史上最大点差からの逆転勝ちに導いた。11日にオーストラリアが敗れ、日本がチェコ戦に勝利すれば5大会連続の準々決勝進出が確定する。

 初のヒーローインタビュー。ヌートバーが右拳を突き上げ、吠えた。「ニッポン、ダイスキ!ミンナアリガトウ!」。4万1629人の大観衆からはもちろん「タツジコール」が湧き起こった。

 「ファンの皆さんの歓声でエネルギーをもらい後押ししてもらった」。3点を先制された直後の3回無死一、二塁。初球。自らの判断でバントを試みた。結果はファウル。栗山監督がベンチから「打っていいんだよ」とジェスチャーを送る。フルカウントからの6球目。08年の北京五輪から日本を苦しめてきた左腕・金広鉉(キム・グァンヒョン)の134キロスライダーを強振した。109・1マイル(約175・5キロ)の高速打球が中前に抜けた。興奮で「ペッパーミル」のパフォーマンスを忘れた。反撃の1点を挙げ勢いづけると、一挙4得点でWBCでは侍ジャパン最大差となる3点差からの逆転劇を呼び込んだ。

 前日に続き中堅守備も魅せた。5回1死一塁、中前に落ちそうな打球に猛チャージし舌をペロリと出しながらダイビングキャッチ。「清水外野守備・走塁コーチの(指示する)ポジショニングが素晴らしかった」と謙遜しながら、ハッスルプレーでピンチを救った。

 君が代を口ずさむほど、日の丸への思いは強い。試合直前のベンチではナインから「タツジ!」とミドルネームで呼ばれ、円陣の声出し役を務めた。「“兄弟”として、家族として、残り6試合。昨日の夜で緊張も解けて、今日は自由に積極的に動きましょう」と気勢を上げた。最後は日本語で「ガンバリマス。サア、イコウ!」と絶叫した。

 大会前の5日。大阪の焼き肉店でチーム全員による決起集会が開かれ、「兄弟」という日本語を教わり、お気に入りだ。「日本に誰も知り合いがいなかった僕を快く受け入れてくれた。僕にとっては意味のある言葉。僕を家族の一員として受け入れてくれた」。6回の第4打席では背中に死球を当てられると、鬼のような形相で投手をにらみつけたまま、一塁へ歩いた。初体験の日韓戦でも、闘争心も「兄弟たち」に負けていなかった。

 「一試合一試合、目の前の試合に集中して勝ちたい」。スタンドの母・久美子さんら家族の前で、最高の輝きを放った。11日にオーストラリアが敗れ、日本がチェコに勝てば準々決勝進出が決まる。誰よりも熱く、誰よりも侍の心を持つ「タツジ」が、チームの先頭に立って鼓舞し続ける。(柳原 直之)

 ≪侍史上最大WBC3点差逆転勝ち≫日本は3回に3点を先制されながら逆転勝ち。WBCでは、13年2次ラウンド・台湾戦、17年2次ラウンド・キューバ戦の各2点差を上回る最大差の逆転勝利になった。なお、日本の主要国際大会での3点差以上逆転勝ちは、21年東京五輪準々決勝の米国戦(3―6→7―6)以来。韓国相手では19年プレミア12の決勝戦(0―3→5―3)以来だ。

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