【内田雅也の追球】「昭和の日」に雑談で聞くエピソード 岡田監督の「歯に衣着せぬ」物言いが心地いい

[ 2024年4月30日 08:00 ]

降りしきる雨の中、室内練習場へと向かう岡田監督(撮影・大森 寛明)
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 マツダスタジアムに隣接する室内練習場にやって来た阪神監督・岡田彰布は「こんなん、初めてよ」と言った。「オレがプロに入って初めて。広島でこんな早い時間に中止が出るのは。いつもギリギリまで粘るやろ」

 阪神として今季初となる降雨中止の連絡が入ったのは午後2時40分ごろ。ホテルで投手ミーティングの最中だった。予期せぬ早い決定に「びっくりしたわ」と笑う。

 喫煙室で雑談となった。「昔は開幕戦でも試合前練習を狭い室内でやってなあ。雨の中、試合やったもんなあ」覚えている。1990年4月7日のことだろう。監督・中村勝広1年目の開幕戦だった。雨降る中、広島駅前のホテルで待機―広島・三篠の室内練習場で練習開始―広島市民球場で練習……とバスで市内を巡った。雨天決行した試合で岡田は自身初の開幕戦本塁打など2発を放ち、中西清起完封で9―0の快勝を飾ったのだ。

 「え~っと、今日は祝日やろ? 昭和の日か……」昭和の話になった。この日、円安が進み一時1ドル=160円台になった。「オレがグアムに行った時は360円よ」リトルホークス時代、関西選抜でグアム遠征した69年だ。「早稲田でテンピに行った時はいくらやったやろ。阪神の時は……」220円ぐらいか。

 「テンピ行った時は伊丹(大阪国際空港)発よ。免税店で(レミーマルタン)ルイ13世買ったら、9万5千円ほどやった」安いという意味である。北新地で飲めば30万円していたそうだ。岡田2年目、81年のキャンプで宿舎ホリデイ・インでは掛布雅之と同部屋だった。「316号室でな」掛布の31、岡田の16を合わせた部屋番をあてがわれた。「カケさんと2人でルイ13世飲んだら、あっという間になくなってたわ」。懐かしんだ。

 番記者も集まってきて雑談は続いた。「昔は雨でも試合するから“広島ドーム”とか言うてな。ウチはどっちでも良かったよ。今日はなんで(中止)や。昨日、延長12回でピッチャーも使ってたし、チームの都合か」

 この辺の、歯に衣(きぬ)着せぬ物言いがいい。相手を気づかっての遠慮や忖度(そんたく)などない。何かとコンプライアンスにしばられる今の息苦しさとは別物で、昭和の思い切りの良さを感じる。だから、いわゆる岡田語録が受けいれられるのだろう。そんなことを思った。 =敬称略=
 (編集委員)

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