【玉ノ井親方 視点】行司の“まわし待った”は妥当な判断。若元春はスタミナ切れ

[ 2022年7月17日 19:45 ]

大相撲名古屋場所8日目   ○照ノ富士(下手投げ)若元春● ( 2022年7月17日    愛知・ドルフィンズアリーナ )

<名古屋場所8日目>照ノ富士(左)と若元春が組み合う中、式守伊之助(手前)が止めに入る(撮影・亀井 直樹)
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 なかなか珍しい光景だった。「まわし待った」は、普通は動きが止まったところで行司が声を出す。しかし、照ノ富士と若元春の結びの一番は、違う形になった。若元春のまわしが伸びて、後ろの結びも外れていたので、行司は二人の動きが十分に止まる前に「まった」の声を掛けた。しかし、若元春はそれが聞こえなかったのか、そのまま前へ。一方、行司の姿が視界に入っていた照ノ富士は「まった」にすぐに反応し、力を抜いて無抵抗のまま寄り切られた。

 結局、審判の協議で「まわし待った」の状態から再開。もうスタミナが残っていなかった若元春は、横綱の下手投げを耐えることができずに敗れた。

 行司の「まった」の判断には疑問の声も挙がったようだが、若元春のまわしがあれだけ伸びていれば、止めるのは当然。声の出し方に問題はあったかもしれないが、たまたまそれが聞こえずに、若元春が出てしまっただけのことだ。

 仮にあの場面で「まった」がかからずに流していたとしても、若元春が横綱を押し切れていたかどうかは分からない。あれだけ大きい横綱にあれだけ大きな相撲を取っていたら、スタミナも残っていなかっただろうし、下手で振られて逆襲されていたかもしれない。

 ただ、それでも若元春が善戦したのは確か。残念だったのは、取った右上手の位置が深かったこと。上手が深すぎたので、横綱の下手投げに振り回された。逆にもっと右上手を浅く取っていれば、横綱の下手も殺せたはず。右から出し投げを打って揺さぶることもできただろう。惜しい金星を逃したが、横綱初挑戦は良い勉強になったはずだ。

 弟の若隆景と同じように小力があるタイプで、上背があって懐が深い。左四つの形を持っていて、突っ張りもある。突っ張ってから流れをつくる相撲を磨いていけば、これからますます楽しみな存在になっていくだろう。(元大関・栃東)
 

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2022年7月17日のニュース