【世界陸上】高野進が見た100メートル決勝 サニブラウン、1レーンでも中間まで引け取らず

[ 2022年7月17日 15:57 ]

陸上・世界選手権第2日 ( 2022年7月17日    米オレゴン州ユージン )

男子100メートル決勝のフィニッシュ風景。4コースがカーリー、1コースがサニブラウン(AP)
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 男子100メートルで、サニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)が日本短距離界の新時代到来を告げる走りを見せた。1983年に初開催され、今大会が18回目となる世界選手権で、日本初となる決勝に臨み、向かい風0・1メートルの中、10秒06で7位となった。男子400メートルで五輪、世界選手権とも決勝進出の経験を持つ高野進氏が決勝のレースを解説した。

 サニブラウンは持っている力を出したと思う。かなり良かった(9秒98の)予選のスタートよりは遅れたが、無難なスタートで中間まで(上位と)ほぼタイで走った。トップスピードまでの流れは引けを取っていなかった。可能性としては上位のチャンスもあったが、9秒7、8台のベストを持つ選手に離されてしまった。

 1レーンで自分の走りをさせてもらうのは難しい。真ん中の選手の飛び出しが気になるレーンで、流れをつかみにくい。ベストの走りをするのは難しかった。悔しい気持ちもあるが、彼が目指すのはもっと上だと思う。ミスなく全力を出して負けたレースは足りない部分がはっきりする。これから改良、強化できる箇所を感じていると思う。

 世界選手権の決勝は、文字通り最終決戦。僕の時は準決勝まではリラックスできたが、決勝になると全員が無口になる。かなり集中し、それぞれがやるべきことに淡々と準備し、独特の雰囲気があった。サニブラウンは初めての決勝かもしれないが、世界の舞台を多く経験している。拠点も米国で英語でコミュニケーションができる。決勝はおそろしく強い連中のところに来てしまう感じだが、その経験によって一緒に頑張る同志とのレースに変わっていくと思う。

 サニブラウンのスタートは改良されているが、スタートからトップスピードまでもう一段上げていくのが課題。スタートから高いピッチを維持するために、体幹の強化や腱のバネを使った走りなど磨きをかけられる部分はたくさんある。年齢的もまだまだ先がある。ケガなく順調に練習を積めば、いつでも9秒台が出せるようになる。9秒83のアジア記録の更新も意識していると思う。あわよくば9秒7台も狙えると思う。

 100メートルで日本人が決勝に行ったことで、夢の世界ではないことが明らかになった。坂井もスタートから中盤まで戦っていた。日本の現役選手は、かき立てられる気持ちになったのではないかと思う。(男子400メートル日本記録保持者、92年バルセロナ五輪8位、東海大体育学部教授)

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