スーツ検査の目的は「公平性」 選手への“厳罰”ではないはず

[ 2022年2月14日 05:30 ]

ジャンプ混合団体で失格となり、声を上げて泣く高梨沙羅
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 【藤山健二 五輪愛】スキー・ジャンプのフィナーレを飾る男子団体が14日夜に行われる。12日のラージヒルでは小林陵侑が銀メダルを獲得。日本中が沸き返ったが、「まさかまた失格なんてことは…」とドキドキしながら見ていた人も多かったのではないだろうか。混合団体での大量失格はそれほど衝撃的で、1週間たった今でもまだ尾を引いている。

 その後の取材などで、当日の検査が通常とは違う方法で行われていたことは分かった。だとすれば、ずっと別々の大会で飛んできた男女の選手が、混合団体という新種目で珍しく一緒に飛ぶことになったため、双方の検査員の間で混乱が起きた可能性が高い。

 ただ、たとえ検査方法がどうであれ、失格した選手たちのスーツが規定違反だったのは事実であり、結果が覆ることはない。高梨沙羅の心中は察して余りあるが、恐らく同情や擁護の言葉をかけても耳に入らないだろう。今はそっとしておいてあげるのが一番で、彼女ならきっとこのどん底から這(は)い上がれるはずだ。

 今回の一件で一番不思議に思ったのは「試合前に一度検査したのに、1本目の後にまた抜き打ちで検査する必要があるのか」ということだ。スポーツにおける検査の目的は「公平性」を保つことであって、選手を厳罰に処すことではないはずだ。「公平性」を保つために事前にしっかりと検査を行い、その上で違反が判明した者には即失格ではなく、正しいスーツを着用して試合に出るように指導する。それが本来の姿であって、わざわざ1本目を飛んだ後に失格を宣言し、選手を奈落の底に突き落とすようなことは絶対にあってはならない。

 大事なことは、この教訓を次に生かすことだ。今回のような悲劇はもう二度と見たくない。国際スキー連盟や関係者はもう一度スポーツの「公平性」について検証し、早急に改善策を打ち出すべきである。(特別編集委員)

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