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ニッコウイワナを後世へ C&R区間設定で保護

[ 2025年9月14日 05:30 ]

こんなに狭い沢になる鬼怒川最上流。標高1800メートルまでイワナの生存を確認
Photo By スポニチ

 【奥山文弥の釣遊録】昨年10月末、栃木・日光の奥鬼怒の秘湯、加仁湯に夫婦で旅行した時、宿のロビーで売っていた「岩魚が呼んだ」(ごま書房新社)という本を購入、帰宅後にじっくり読みました。著者は写真家の青柳陽一さん。「平凡パンチ」に掲載された、グラビアモデル麻田奈美の“リンゴヌード”などで知られています。

 本によれば、イワナにほれた青柳さんが1965年から通い始めたのが奥鬼怒川。加仁湯を常宿とし釣りに没頭したそうです。当時は、雨が降ったらイワナが湧くといわれるほど魚影が濃かったらしいのですが、有名になって乱獲されると、瞬く間に数が減ったそうです。青柳さんは75年に奥鬼怒岩魚保存会を設立。イワナの増殖が目的で、漁協と話し合い最上流を禁漁区にしました。

 イワナを増やすにはどうしたらいいか、増えたイワナが減らないようにするにはどうしたらいいのか――本にはキャッチ&リリース(C&R)こそが簡単かつ非常に効果のある保護方法であると信じると書かれています。

 8月末、奥鬼怒川のイワナのDNA解析を保存会と共同研究している東北大学大学院海洋生命遺伝情報学の中嶋正道准教授らと一緒に、最上流のイワナ調査に参加しました。同行者は保存会現会長の小池久男さんと事務長の鈴木健祐さん、ここを管轄する川俣湖漁協の平英治さんと山口功一さんでした。登山道を3時間半歩いて最上流の沢に到着。ここから釣り上がり、標高1800メートル地点までイワナを確認しました。

 さて、解禁している一般エリアはどうなっているのでしょうか?漁協によれば、現在の成魚放流は女夫渕温泉駐車場より下流のみですから、上流に位置する加仁湯周辺の魚は全て自然繁殖です。

 筆者がネットで調べてみると、この辺りの釣りを紹介している投稿者はほとんどがルアーやフライの釣り人で、釣った魚をリリースしています。

 小池会長は、女夫渕から禁漁境界の堰堤(えんてい)までの区間で餌釣りをして毎回30~50匹は釣れると言っていました。リリースはしないそうです。小池会長の技術が卓越しているとはいえ、ここの再生産力はそれだけ大きいものなのでしょうか。

 保存会の目的が天然魚の増殖であるならば、禁漁区では成功しているといえましょう。しかし、一般エリアでも、いつでも釣れる環境が欲しいものです。

 また、ニッコウイワナという名前、そしてそんな魚がこのエリアに棲んでいることを周知して後世に残したいというのであれば、多くの若い人たちにここへ来て釣りをしてもらうことが重要かもしれません。
 そのためにも、青柳さんが提唱した通り、C&R区間を設定すれば、いつ来ても天然魚がたくさん泳ぐ川が維持されます。

 岩魚が呼んだ――本のタイトル通り、筆者もイワナに釣られてここに来た一人です。できれば10年後も20年後も純血ニッコウイワナが釣れる川として人々を魅了し続けてほしいものです。(東京海洋大学元客員教授)

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